なぶんけんブログ|奈良文化財研究所に関する様々な情報を発信します。

コラム作寶樓の最近のブログ記事

木を見て文字も見る

木を見て文字も見る

2021年10月  「木を見て森を見ず」は、物事の一部分や細部にとらわれて、全体を見失うことを言うことわざです。平城宮跡からも大量に出土する木簡は、「木」に「文字」が書かれているわけですが、みなさん「文字」には関心を寄せるものの、「木」にはあまり注目してくれません。冒頭のことわざをもじると、「木を見...

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身近にある「昔からあるもの」

身近にある「昔からあるもの」

2021年10月  コロナ禍が続く中、しばらく帰省ができず、実家とはビデオ通話で連絡を取り合っています。画面越しとはいえ顔を見て話ができて、便利な時代になったなぁと実感すると同時に、もっと近くに住んでいたら直接会えるのにとも思います。思えば、私の実家は関東で、兄も私も県外へ出て生活をしています。さら...

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石のあかぎれ

石のあかぎれ

2021年9月  長引くコロナ禍の中、昨年の冬は例年以上に手を洗う頻度が増えたため、手のあかぎれに悩まされました。いまさらではありますが、冬の外気は湿度が低いため、私達の肌から外気によって水分が奪い取られてしまうことがあかぎれの原因です。このように、水分が外気によって奪われてしまうことで起こるトラブ...

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古代人の指紋

古代人の指紋

2021年9月  土器や埴輪などを観察し、触っていると、自分の指が器面に妙にフィットするのを感じることがあります。土器製作時に古代人によって残された指の痕跡と、自分の指が合致するからです。さながら古代人と手を合わせたかのように感じられるわけですが、その中でもまれに指紋が残される場合があります。  こ...

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キトラ古墳 十二支の服装

キトラ古墳 十二支の服装

2021年8月  明日香村に所在するキトラ古墳の壁画には、四神や天文図の他に、十二支の像が描かれているのをご存知ですか。この十二支は頭が動物で、身体は人間という姿をしており、右手に武器を持つのが特徴です【図1】。被葬者を邪悪なものから守護する目的で描かれたと考えられており、石室の東西南北の壁面に3体...

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遺跡とMinecraft

遺跡とMinecraft

2021年8月  Minecraft(マインクラフト)はビデオゲームの1つで、サバイバル生活や洞窟探検に挑んだり、狩猟採集・牧畜・農業・採掘に勤しんだり、立体的なブロックを自由に配置して家々を建築したり、道路や街灯を整備して街づくりに熱中したりと、好きなように世界を楽しむものです。  大人の皆さん、...

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展示されてみました

展示されてみました

2021年7月  2019年に飛鳥資料館で春期特別展『骨ものがたり-環境考古学研究室のお仕事』を開催しました。「普段は見ることのできない研究の舞台裏を知ってもらうことで、歴史や考古学を身近に感じてもらいたい」というコンセプトのもと、研究成果よりも研究過程を見せることを重視した展示でした。  企画打ち...

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キトラ天文図の観測年代に関する「謎」

キトラ天文図の観測年代に関する「謎」

2021年7月  飛鳥にある壁画古墳・キトラ古墳の石室の天井には、中国式の円形星図が描かれています。この図をここでは「キトラ天文図」と呼ぶことにしましょう。このキトラ天文図には、360個ほどの星を朱線で結んだ74座の星座が確認できます。これらの星座は、現代人には馴染みの薄い中国の星座ですが、図に描か...

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平城宮佐伯門付近における遺跡の環境整備

平城宮佐伯門付近における遺跡の環境整備

2021年6月  平城宮跡の隣にある奈文研本庁舎の場所は、平城宮の西の出入口であった佐伯(さえき)門の正面にあたります。この門の外には一条南大路と西一坊大路という大きな道路が通っており、門から宮内に入ると、馬を管理した馬寮(めりょう)という役所があったと考えられています。この門は今から50年前に一風...

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鮭と鱒の話

鮭と鱒の話

2021年6月  サケ(鮭)は日本人が好んで食べる魚のひとつですが、その利用はいつ、どのようにはじまるのかはあまり知られていません。マス(鱒)という魚もいます。生涯の一時期、海に降りるものをサケ、一生を通じて淡水生活を送るものをマスと呼ぶようですが、海に降りたサクラマスなどのようにその区別は日本語で...

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ドアの無いヘリコプター

ドアの無いヘリコプター

2021年5月  ヘリコプターで空中散歩。  なんと優雅な響きを持つ言葉でしょう。  写真室で仕事をする筆者は、毎年八尾空港からヘリコプターに乗って遺跡等の撮影をします。写真は被写体の位置や形状を写し取るのが得意です。例えば、発掘調査は地面の下にある遺構や遺物を確認しながら、地形の起伏を巧みに利用し...

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コロナ禍における博物館の新しい情報発信のあり方

コロナ禍における博物館の新しい情報発信のあり方

2021年5月  新型コロナウイルスの感染拡大を受け、最初の緊急事態宣言が発令されてから早くも1年が経過しました。収束する気配は一向になく、変異株の流行によって第4波も懸念されています。昨年の今頃は来年には落ち着いているだろうと安易に考えていましたが、まだまだ予断を許さない状況が続いています。  新...

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「産廃」の考古学-いにしえのものづくりを探求する-

「産廃」の考古学-いにしえのものづくりを探求する-

2021年4月  「産廃」、すなわち「産業廃棄物」とは、『広辞苑』(第六版)では「事業活動によって生ずる廃棄物」とあります。私たちが発掘調査をすると、このような過去の時代の「産廃」ともいえる考古遺物に出会うことがあります。たとえば、鉄鍛冶がおこなわれた鍛冶遺跡を発掘すれば、鉄器の鍛冶の工程で排出され...

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アンコール・ワットを訪問した日本人

アンコール・ワットを訪問した日本人

2021年4月  文化財を扱っていると、調査が一段落した後もずっと、頭の片隅に残り続けることがあります。私の場合、そういう記憶はたいてい、「あれが最良の処置だったのだろうか」と、心に引っかかっている場合です。  図1は、カンボジアのアンコール・ワットの柱に書いてある銘文です。皆様はこれをどう読みます...

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鳳凰文鬼瓦の復元案

鳳凰文鬼瓦の復元案

2021年3月  平城宮からは、これまでに3回の発掘調査(平城第11次・139次・429次調査)で、鳳凰の文様を施した鬼瓦が出土しています。このうち、第11次調査で出土した破片2点は最も残りが良く、鳳凰の上半身の様相がうかがえる重要な資料となっています。この破片は、1960年代に欠損部分を補填して復...

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木造住宅の柱間隔

木造住宅の柱間隔

2021年3月  みなさんは自分の家の柱の間隔を測ったことがあるでしょうか。最近の木造住宅では、柱が壁の中に隠れてしまうので測ることができないかもしれませんが、柱がみえる和風住宅や民家で考えてみましょう。和風住宅の柱間隔は、1つの住宅では一定の寸法を基準にしています。  では、柱間隔とは具体的に柱の...

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古代の疫病・天災とデマ

古代の疫病・天災とデマ

2021年2月  新型コロナウィルスの感染拡大が世界中で歯止めがかからなくなってきた2020年の初夏、驚くようなニュースを目にしました。欧米で5Gの携帯電波がウィルスの感染を加速するとの噂を信じた人が、携帯電話の基地局を破壊する事件がおこったという報道でした。疫病や天変地異が引き起こす社会不安には、...

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慶応二年(1866年)、大坂城に怪獣現る!

慶応二年(1866年)、大坂城に怪獣現る!

2021年2月  江戸時代には、瓦版と呼ばれたニュースを載せた印刷物が巷に出回っていました。この瓦版、現在の新聞などとは違い、噂や怪異などの出来事についても盛んに取り上げられていました。例えば、昨今の疫病流行によって注目を浴びているアマビエも、もとは瓦版の一種に掲載されていたものです。2020年度に...

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船をつなぐ石

船をつなぐ石

2021年1月  いつの時代でも船というものは、係留の際に潮に流されないよう、ロープや錨で固定する必要があります。しかし、中近世には、現代のような整備された港湾やコンクリートや鋼鉄製の杭などありませんので、自然地形を活かして係留しました。実際、戦国時代の水軍の拠点であった愛媛県の能島城や来島城では、...

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ナツメのはなし

ナツメのはなし

2021年1月  みなさんはナツメ(棗)を食べたことがありますか。赤い楕円形の実で、干したものが薬膳料理などで使われますが、普通のスーパーではまず見かけないと思います。  ところが、岐阜県高山市を訪れた際に、飛騨ではナツメを食べる風習があると聞きました。庭先によく植えられていて、秋になると果実を生で...

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ひかりで拓本をとる

ひかりで拓本をとる

2020年12月  文字や図像は筆と墨を用いた色情報で表現されるだけではなく、石や金属の表面を加工して凹凸で表現されることがあります。これは金石文と呼ばれ、土器や木器、金属器など材質を問わず、石碑や仏像、梵鐘、通貨、レリーフ、刀剣などの様々な文化財に見ることができます。  拓本は、この金石文など対象...

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都市社会の崩壊

都市社会の崩壊

2020年12月  都市が廃墟と化す。まるで近未来SFに出てきそうな話ですが、人類史上、実際に起こった出来事です。今回は、現在の状況をみているとつい頭をよぎってしまう、この物騒な出来事を紹介します。  私が研究対象としている西アジア地域では、遅くとも前4千年紀後半にはすでに黎明期の都市社会が成立して...

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西安麺紀行

西安麺紀行

2020年11月  最近、研究所の同僚が、奈良時代に小麦から作った手延べ麺を食べるのに使用した器の研究成果を発表しました(森川実「麦垸と索餅」『奈文研論叢』第1号、2020年)。日本の主食は古来から米である、というイメージに新たな光を当てました。日本の麺類が奈良時代まで遡るとなると、本場中国ではどの...

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日本古代の

日本古代の"男同士の絆(ホモソーシャリティ)"

2020年11月  日本古代宮廷の「男同士の絆」を研究しています。ホモソーシャリティと呼ばれもする、男同士の親密な関係性が、日本古代の史料にどんな風に出てくるのかが研究の最初でした。研究テーマとしては、結構無謀なのですが、実際に史料を読んでいくと、意外なほど記述が見つかります。  このホモソーシャリ...

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カザフスタンで蘇に出逢う

カザフスタンで蘇に出逢う

2020年10月  今春、新型コロナウイルス感染症の影響で、学校給食の牛乳が行き場を失ってしまった、というニュースをお聞きになった方も多いかもしれません。そんな中、自宅でも簡単につくれる乳製品として、静かなブームを呼んだものがありました。それが、「蘇(そ)」です。蘇は、奈良時代から平安時代にかけて、...

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奈良時代の

奈良時代の"あの世"事情

2020年10月  幼いころに「嘘をつくと閻魔(えんま)様に舌を抜かれるぞ!」なんて、1度くらいは言われたことがあるのではないでしょうか。閻魔様はあの世の裁判官です。裁判官は閻魔様を含めて10人、それを「十王(じゅうおう)」と呼びます。そして、十王の裁判を受けて極楽往生(ごくらくおうじょう)するのか...

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平坦で楽な道

平坦で楽な道

2020年9月  平城京の西北隅には、南北約270m東西約1.6㎞の張り出し部分があり、北辺坊と呼ばれています。北辺坊は、奈良時代後半の西大寺造営にともない、広大な寺地を確保するために、京域を北側に拡大して設定されたとみられています。その故地は、近鉄大和西大寺駅の北方とその北西にあたり、南北は西大寺...

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中国古代の郵便事情 ―上有政策,下有对策―

中国古代の郵便事情 ―上有政策,下有对策―

2020年9月  およそ2000年前の中国には、国営郵便局が設置されていました。古くは始皇帝時代の出土木簡から、その郵便事情をうかがい知ることができます。今回は、漢代後期の興味深い事例を紹介します。 ●2000年前の郵便伝票  現代日本の日常生活で目にする郵便伝票のようなものが、中国甘粛省の砂漠から...

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復元鬼瓦のバージョンアップ

復元鬼瓦のバージョンアップ

2020年8月  平城宮跡内を走る近鉄電車の車内から眺める朱雀門や大極殿は、奈良ならではの風景でしょう。でも、少し前から大極殿の手前(南側)に大きな覆屋がそびえ立っています。この覆屋は2019年に始まった大極殿院南門の復元工事のためのものです。朱雀門(1998年復元)、第一次大極殿(2010年復元)...

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法華寺境内の庭園群

法華寺境内の庭園群

2020年8月  平城宮跡のすぐ東に位置する法華寺は、光明皇后が父・藤原不比等の邸宅を「宮寺」に改めたことに始まる尼門跡寺院です。近世には「氷室御所」とも称され、現在の本堂の北西には歴代門主の住まう「御殿」が営まれました。  この「御殿」の中心的な建物である客殿(県指定文化財建造物)は、寛文13年(...

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歴史や文化財の魅力を伝えたい!

歴史や文化財の魅力を伝えたい!

2020年7月 考古学専門ではないからこそ、わかりやすく伝えられる  飛鳥資料館や奈良文化材研究所といえば、考古学のイメージが強いかと思いますが、考古学以外にも様々な分野の研究者が協力して調査・研究を進めています。  私は飛鳥資料館で学芸業務をしていますが、専攻は考古学ではなく「文化遺産マネジメント...

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オンラインデータベースの翻訳

オンラインデータベースの翻訳

2020年7月  奈文研のホームページでは、『木簡庫』や『全国遺跡報告総覧』など、数多くのオンラインデータベースが公開されています。これらのデータベースの一部は日本語以外の言語にも対応しています。今回はオンラインデータベースをどのように多言語化対応させるのか見てみましょう。  データベースは基本的に...

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「生」の食品と加工した食品

「生」の食品と加工した食品

2020年6月  「生(なま)」の対義語は「加工」です。でも、古代において煮たり焼いたり蒸したり漬けたりした食品をぜんぶひっくるめて「加工」食品とは言いません。荷札・付札木簡などを眺めていると調理した食品にはその加工法が記されていることが多いように思います。  アワビはさまざまな加工をして都にもたら...

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ヤリガンナ木屑の行方

ヤリガンナ木屑の行方

2020年6月  みなさんは、昨年10月におこなわれた第一次大極殿院南門復原整備工事の特別公開には足を運ばれましたか。私も足を運び、職人さんが木材を削るところを見学し、またVRシアターでは完成した南門の姿を空中から楽しみました。  中でも、宮大工実演のコーナーでは、ヤリガンナという大工道具で木材を削...

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古代都市平城京の疫病対策

古代都市平城京の疫病対策

2020年5月  律令制度に基づく国家づくりが軌道にのり、平城京が国の中心として繁栄しつつあった天平7年(735)。天然痘とみられる疫病が、大宰府管内で流行し始めました。翌年には一旦、収束したともみられていますが、天平9年(737)4月に再度、大宰府管内で流行がはじまると、7月には平城京をはじめ畿内...

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神社か?寺院か?

神社か?寺院か?

2020年5月  皆さんもご存じのように、関西には有名な名所・旧跡がたくさんあります。なかでも私は、京都府八幡市にある石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)(図1)に深い興味を抱いています。その名の通り、現在、石清水八幡宮は神社です。しかし、前近代においては、神社と寺院の合体した宗教施設でした。私は...

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鞍馬炭と木の芽煮

鞍馬炭と木の芽煮

2020年4月  京都市北部の鞍馬は鞍馬寺の門前町として有名ですが、京の七口の一つである鞍馬口と鞍馬を結ぶ鞍馬街道、そして鞍馬から若狭を結ぶ若狭街道との結節点だった場所でもあります。『近畿歴覧記』(黒川道祐、貞享期頃か)に「樓門ノ前ニ家アリ、酒食ヲ賣リ、幷ニ山椒ノ皮、木ノ目漬黒木薪柴炭等ノ物を賣レリ...

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歴史を遺す写真の歴史

歴史を遺す写真の歴史

2020年4月  文化財を写真で記録し遺す。私の所属する写真室の現在の業務です。  写真を使って文化財を遺すことは実は古くからおこなわれています。近代写真技術が発明されたのは1830年代のダゲレオタイプ(いわゆる「銀板写真」)と言われています。写真機材が日本に渡来したのは1840年代の終わり頃、日本...

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いま長屋王家木簡を見直そう!

いま長屋王家木簡を見直そう!

2020年3月  このコラムのタイトルにもなっている作寶樓の主、長屋王(676?-729)に関わる長屋王家木簡35,000点の発見(1988年)から、もう30年以上が経ちました。発掘調査によって住人を特定できた稀有の事例で、それも木簡の発見があればこそでした。  長屋王家木簡は、平城遷都直後の710...

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時刻表9百キロ

時刻表9百キロ

2020年3月  『時刻表2万キロ』という本をご存知ですか。『中央公論』の名編集長と謳われた宮脇俊三さんが、国鉄全線およそ2万キロ完乗の旅をつづった紀行文で、鉄道紀行を初めて文学作品にまで高めた名作です。私も鉄道旅行が好きで、学生時代からいろいろなところに出かけていました。1979年に四国全線約9百...

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各地に潜む古代のことば ーブリ・ハマチ・イナダー

各地に潜む古代のことば ーブリ・ハマチ・イナダー

2020年2月  鹿児島県を旅行中、聞きなれない言葉を耳にしました。  「全部になりました。」  鹿児島地方では普通に使う言葉で、意味は「全部無くなった」とのこと。面白い表現だなあと感心してしまいました。  それからしばらくして、狂言を鑑賞してました。すると、空っぽになったことを、  「皆(みな)に...

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バクテリアがつくる顔料

バクテリアがつくる顔料

2020年2月  日々の生活の中で、道路の側溝や水路の排水口に、褐色の沈殿や鉄サビ色の泥が流れたような痕跡を目にしたことはないでしょうか。例えば、図1の写真は、私が毎日通勤ルートで見かけてきたものです。  この褐色の堆積こそ、バクテリアがつくる顔料「パイプ状ベンガラ」の原料です。 パイプ状ベンガラは...

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装飾古墳 平成28年(2016年)熊本地震による被災と復旧の足取り

装飾古墳 平成28年(2016年)熊本地震による被災と復旧の足取り

2020年1月  2016年4月、震度7を観測する地震が九州地方を襲いました。中でも震源地となった熊本では、死者が50人に上るとともに、山崩れ、橋梁の崩壊、家屋の倒壊等、その被害は甚大なものとなりました。文化財についても、熊本城をはじめとした阿蘇神社等の文化財建造物の倒壊とともに、歴史的な文書や美術...

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破魔矢と古代の矢

破魔矢と古代の矢

2020年1月  新年明けて、令和2年となりました。今年の正月は、どのように過ごされたでしょうか。  正月になると、平城宮跡や藤原宮跡では凧揚げに興じる親子の姿をよく見かけます。独楽回し、羽根つき、双六に福笑い、遊びのなかには王朝年中行事に由来するものがあることはよく知られています。しかし、こうした...

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中国西安の瓦調査から

中国西安の瓦調査から

2019年12月  20年ほど前、中国の西安で、前漢の長安城の瓦を調査しました。当時、平城宮の瓦を研究していた私は、長安城の瓦から何ともいえない違和感を覚えました。その違和感は何か、しばらくして気づきました。文様の笵の違いです。長安城の軒瓦は、日本と同じく、文様をかたどった笵を粘土に押して文様をほど...

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古代建築部材に隠れた大工の技

古代建築部材に隠れた大工の技

2019年12月  奈良には建てられてから1200年を超える古代建築がたくさん残っています。これらの古代建築は主に木造で、見るたびに私はその全体の雄大さに心を癒されます。  ところで、電動工具がない古代に、これらの建築の部材はどのようにして製材されたのでしょうか? 山に生えている原木は、伐採ののち製...

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気付くことで見えること

気付くことで見えること

2019年11月  考古学研究などという風変わりなことを仕事にしてしまうと、普段の生活の中の景色の中でも人の活動の「かけら」を見つけてしまいます。道を歩いていても、ここは少し小高いから集落がありそうだナア、とか、あの地割は古そうダゾ、とか、あそこは意図的に地形を削って何か建てたのカナ、とか。「おそら...

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平城宮跡のうんち

平城宮跡のうんち

2019年11月  今から十年前の2009年1月に、平城宮東方官衙地区の一画で推定十万点とされる木簡が検出された大きなごみ穴が発掘されました。このごみ穴をすべて掘り上げた穴の底から、多量のウリの種を含む小さな穴が、数か所見つかりました。ウリの種の塊とともに、トイレットペーパーとして使われた籌木(ちゅ...

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宮殿らしさ

宮殿らしさ

2019年10月  平城宮は奈良時代の宮殿ですが、現在の平城宮跡で宮殿らしさを感じられるところはどこでしょうか?そうですね、朱雀門や大極殿の巨大な復原建物は、平城宮跡の名所として定着してきましたね。たしかに、赤色の太い柱や、緑色の窓は、「あおによし~」と謳う都のイメージに合いますね。  ところで、日...

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新庁舎に眠るお宝

新庁舎に眠るお宝

2019年10月  奈文研では、1952年(昭和27年)の開所以来、発掘調査はもとより、私が関わる建造物をはじめ、さまざまな分野の調査研究をおこなってきました。これら成果は、報告書、年報、紀要等、さまざまなかたちで世の中に発表されています。とはいっても、発表された成果は、実際に調査した内容の一部にす...

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藤原宮大極殿院南門前幢幡遺構の配置について

藤原宮大極殿院南門前幢幡遺構の配置について

2019年9月  2016年に藤原宮大極殿院南門前で発見された7本の幢幡遺構についてはこのコラムでも以前に取り上げられてきました(2017年3月、2018年11月、2019年4月)。大宝元年(701)元日の朝賀の時に烏形幢、日像幢、月像幢、青龍幡、朱雀幡、白虎幡、玄武幡を立てたと考えられる柱穴の跡で...

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エノコログサとアワ

エノコログサとアワ

2019年9月  エノコログサ(Setaria viridis)。平城宮跡でもよくみられる、ふさふさの穂が特徴的な野草"ねこじゃらし"のこと。ちなみに、中国語で狗尾草(イヌの尾の草)、英語ではgreen foxtail (緑色のキツネの尾の草)、奈良時代の平城宮東方官衙地区でも生えていました。  こ...

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礎石からみた古代建築の上部構造

礎石からみた古代建築の上部構造

2019年8月  奈良文化財研究所では、平城宮跡などを舞台に、失われた建物の復元研究をおこなっています。復元研究は、発掘調査で見つかった建物跡、その建物に使われた瓦や礎石などの出土遺物を中心として、関連する文献・絵画などの資料や、現存する類例建物の検討など、多面的な分析が必要です。復元研究の方法は、...

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掘立柱建物に住む

掘立柱建物に住む

2019年8月  古代の集落は、大きく2種類の建物で構成されていました。一つは地下式の「竪穴建物」で、もう一つが地上式の「掘立柱建物」です。縄文時代以来、住居はほとんどが竪穴建物で、掘立柱建物は倉庫や神殿、居館といった施設に限られていました(図1)。しかし、古墳時代には掘立柱建物を一般の住居として使...

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鞍つくりから仏つくりへ

鞍つくりから仏つくりへ

2019年7月  みなさんは鞍作鳥(くらつくりのとり、止利とも書く)という人物をご存知でしょうか。  彼は日本最初の本格的寺院である飛鳥寺の釈迦如来像(飛鳥大仏)のほか、法隆寺金堂の釈迦三尊像をつくったことで知られる、飛鳥時代を代表する仏師です。ではなぜ、彼の名前は「仏作」ではなく、「鞍作」なのでし...

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ハエがつないだ日韓交流

ハエがつないだ日韓交流

2019年7月  ポンテギという韓国の食べ物をご存知でしょうか?ポンテギとは、韓国語でさなぎを意味する単語ですが、一般的には、蚕のさなぎを醤油などで甘辛く煮たものを指し、ある時はマッコリのつまみとして、ある時は食べ歩きのおやつとして屋台で目にする、韓国ではお馴染みの食べ物です。しかし、とにかく見た目...

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「時をこえて」掘りおこされた埴輪

「時をこえて」掘りおこされた埴輪

2019年6月  木々の新緑がまぶしい平城宮跡は、遠足シーズンもあって小学生でにぎわう季節を迎えています。その平城宮の正門、朱雀門の前に、昨年3月に開館した「平城宮いざない館」があります。奈良時代を体感し、その舞台となった平城宮跡に親しんでいただくための、ガイダンス施設です。   平城宮いざない館の...

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「骨ものがたり-環境考古学研究室のお仕事」の舞台裏

「骨ものがたり-環境考古学研究室のお仕事」の舞台裏

2019年6月  現在、飛鳥資料館では、春期特別展「骨ものがたり-環境考古学研究室のお仕事」が開催されています。(4月23日~6月30日)  環境考古学とは、遺跡から出土する動植物遺存体(骨や種子など)の調査を通して、昔の生活環境や食生活、生業など、人と自然がどのように関わりながら生きていたのか、そ...

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モンゴルの兵馬俑

モンゴルの兵馬俑 "Shoroon Bumbagar"

2019年5月 皆さんが「兵馬俑」という言葉を聞いたとき何を連想されるでしょうか? おそらく、多くの人は中国の秦の始皇帝陵をすぐに思い浮かべるのではないかと思います。確かに、始皇帝陵の兵馬俑は世界的にも有名で、質・量ともに群を抜いています。しかし、兵馬俑は始皇帝陵だけで発見されているわけではありませ...

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烏形の幢は八咫烏か

烏形の幢は八咫烏か

2019年4月   藤原宮大極殿院の南門前から2016年の夏に発見された7本の幢幡遺構。その配置と性格について、2017年3月1日の作寶楼「藤原宮の幢幡遺構を読み解く」で私見を述べました。その際に未解決の課題として残されたのが、中央に位置する烏形の幢の性格でした。この烏形幢は、四神幡や日月像と異なり...

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遺跡に刻まれた災害の爪痕

遺跡に刻まれた災害の爪痕

2019年4月   先日(3/8)、平城宮跡資料館で開催されている「発掘された平城2017・2018」(2019/2/2~3/31)のギャラリートークで、平城京跡で発見された地震の痕跡についてお話しさせていただきました。平城宮の正門・朱雀門の周辺から出土した人形や、法華寺旧境内から出土した井戸枠の磚...

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優等生は芯が強い?

優等生は芯が強い?

2019年3月   立派な木製品が出土したよ!――こうした明るい声の報告が発掘担当者から寄せられることがあります。この「立派」というのは、人力では持ち上げられないほど大きいという意味や、とても1000年以上ものあいだ地下に埋まっていたとは思えないほどかたくしっかりしているといった意味であることが多い...

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奈良時代、美しい文字の裏側

奈良時代、美しい文字の裏側

2019年2月   平城宮跡資料館では、毎年秋に「地下の正倉院展」で木簡の実物を展示しています。けっして見栄えする遺物とはいえない木簡ですが、来場者の方からは、毎年必ずと言っていいほど「木簡の文字がきれいで、読みやすくて、感動した」という感想をいただきます。  奈良時代の出土文字資料の中には、時に目...

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お風呂のトリプル「七」

お風呂のトリプル「七」

2019年2月   身体の芯まで冷える2月。こんな時はゆっくりとお風呂に浸かって、こごえた身体を温め、一日の疲労を癒したいものです。5月の菖蒲湯や12月の柚子湯のように、2月の季節湯は大根湯だそうですよ。  古代の入浴法のひとつに、蒸気浴という形式があります。いわゆるミストサウナです。奈良時代の寺院...

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閉室日の過ごし方 ~キトラ古墳壁画保存管理施設の場合~

閉室日の過ごし方 ~キトラ古墳壁画保存管理施設の場合~

2019年1月   みなさんは博物館に足を運ぶ機会はありますか? 訪れる前には、アクセスや開館情報を調べるという方も多いのではないでしょうか。各館の情報を確認すると、館ごとに違いはありますが、週に一度は休館日を設けている博物館が多いと思います。私が勤務するキトラ古墳壁画保存管理施設の展示室では、毎週...

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カンボジアのもち米つき

カンボジアのもち米つき

2019年1月   みなさんはお正月にお雑煮を召し上がられたでしょうか。私の実家では、近所のお米屋さんからお餅を購入していましたが、今でもご家庭でお餅つきをする方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。  私が調査に入っているカンボジアは、日本と同じくコメ食文化を持っており、もち米も栽培しています...

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フタの裏には何がある?

フタの裏には何がある?

2018年12月   すっかり季節は冬になり年末が迫ってくる中で、温かい紅茶や茶碗蒸しが美味しい時期になりました。その紅茶のポットや茶碗蒸しの容器のフタを、裏返しにしてみてください。写真の右側のように、フタそのものよりも一回り小さな径で、円筒状の突起をもつものがありますね。この突起は古代の須恵器にも...

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鉄の文化財を保存する

鉄の文化財を保存する

2018年12月   「なぜ我々は出土鉄製文化財の保存の研究に取り組むのか?」その理由の一つは鉄という元素が持つおもしろい特徴にあります。  鉄は元素番号26、電子数26、周期表の中央より少し上に位置する点で特殊性は見出せません。しかし、地殻やマントル、核には地球の体積の約1/3を占めるほどの鉄が含...

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平城から、平成まで ―「隆光さんの墓石」の向こうに―

平城から、平成まで ―「隆光さんの墓石」の向こうに―

2018年11月   平城宮跡の北端近く、佐紀池の北のほとりに立つ「隆光(りゅうこう)さんの墓石」を知る人は、あまり多くないかもしれません。  ですが、ここは、平城宮跡に堆積した「歴史の地層」を眺めるには格好のスポットです。  「隆光さん」は江戸時代中期の僧侶・護持院隆光のこと。徳川五代将軍綱吉の祈...

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平城宮第一次大極殿院における幢旗遺構の発見と奈文研の継続調査

平城宮第一次大極殿院における幢旗遺構の発見と奈文研の継続調査

2018年11月   元日朝賀と即位式は、古代国家にとって最も重要な儀式でした。これらの儀式に用いられたのが、烏・日月・四神をモチーフにした7本の宝幢・四神旗(幡)(以下、幢旗(幡))です。平安時代の史料には、主柱に2本の脇柱が付く3本柱の幢旗が大極殿の前に7本横一列に並ぶと規定されています。198...

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「自由(フリー)」と「オープン」で広がる新たな世界

「自由(フリー)」と「オープン」で広がる新たな世界

2018年10月   皆さんは飛鳥資料館の平成30年度春期特別展「あすかの原風景」はご覧になりましたでしょうか?  その展示室の片隅に、空中写真や古絵図を自由に拡大縮小表示するPCが置かれていたことにお気づきになりましたか?  この装置は、飛鳥資料館の西田研究員が調査した古地図の画像と現在の風景とを...

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「十六むさし」と「八道行成(やさすかり)」

「十六むさし」と「八道行成(やさすかり)」

2018年10月   最近、我が家では子どもと一緒に「十六むさし」というゲームで遊んでいます。 十六むさしとは、四角と三角の外枠に縦横斜めの線を引いた盤面(図1)の上で、親駒と子駒を交互に動かして遊ぶ対戦ゲームです。親駒1個、子駒16個でゲームを開始し、親駒が子駒の間に入ったら子駒を捕って数を減らす...

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様式主義のハイテック

様式主義のハイテック

2018年9月   関西といえば、古代建築をはじめ古建築の宝庫ですが、明治以降につくられた近代建築もまた多く残っています。特に大阪には、大大阪時代と呼ばれた大正後期から昭和初期に建てられた、優れた近代建築が多く残っています。この頃の建築の主流は、ヨーロッパの建築様式を駆使してつくられる様式主義建築で...

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正史と礎板

正史と礎板

2018年9月   宝亀3年(773)12月29日、狂った馬が平城宮的門の土牛・偶人と、弁官の役所の南門の限(シキミ)を食い破る。  『続日本紀』に記された一コマです。興奮して暴れる馬、役人たちのわたわたと慌てる姿が目に浮かびます。奈良時代の国家に関わる出来事を記したお堅い正史にあって、思わずにやり...

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木簡の「夏」

木簡の「夏」

2018年8月   今年の夏は異常なまでに暑い日が続きました。お盆も過ぎ、少しは暑さも和らいできたように感じられますが、各地で39度を記録する日もあるなど、まだ油断はできません。来夏以降もこのような猛暑が続くのでは、という不穏な話も耳にします。  さて、古代にも毎年暑い夏がやって来ていたはずですが、...

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大極殿を飾った二種類の凝灰岩

大極殿を飾った二種類の凝灰岩

2018年8月   藤原宮大極殿は、柱の基礎に礎石を使用し、屋根には瓦を葺くという大陸的な様式を 取り入れた、我が国で最初の宮殿建築でした。桁行9間、梁行4間のその巨大な建物は、舞台のような高い基壇の上にそびえていました(図1)。古代の寺院や宮殿の基壇は、土を盛り固めて築かれますが、最終的に表面を精...

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むぎまりのはなし

むぎまりのはなし

2018年7月   平城宮や平城京で出土する土器には、それらがかつて使われていたときについていた名前があったはずです。例えば奈良時代の「正倉院文書」には、水埦(みずまり)、麦埦(むぎまり)、羹坏(あつものつき)・饗坏(あえものつき)・塩坏という器名がたびたび登場します。そうすると平城宮から出土する土...

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瓦の「重さ」からわかること

瓦の「重さ」からわかること

2018年7月   平城宮・京や寺院跡を発掘しますと、非常に大量の瓦が出土することがあります。例えば、平成15年に行われました法華寺の防災施設改修工事に伴う発掘調査(平城第363次)では、調査面積がわずか321㎡だったにもかかわらず、実に4t以上の瓦が出土しました。  さて、この「4t以上」という数...

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インドからローマまで

インドからローマまで

2018年6月   みなさんは、弥生時代や古墳時代のお墓からたくさんのガラス小玉が見つかっていることをご存知でしょうか。驚くことに、これまでの発掘調査で実に60万点をこえるガラス小玉が出土しています。  日本でガラス小玉が初めて出現するのは紀元前3世紀頃の北部九州です。この時流入したガラス小玉は、直...

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藤原宮から平城宮、瓦工人の足跡をたどる

藤原宮から平城宮、瓦工人の足跡をたどる

2018年6月   694年(持統天皇8年)、飛鳥浄御原宮から遷都した藤原宮では、日本で初めて寺院以外に瓦が採用されました。屋根を覆う黒灰色の瓦は、建物を風雨から守るだけでなく、建物を荘厳にみせる効果があります。瓦葺の藤原宮は、律令制に基づいた新しい都城の象徴として視覚的にも大きなインパクトを与えた...

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年輪を使って木製品のパズルを解く

年輪を使って木製品のパズルを解く

2018年5月   年輪年代学は,狭義には年輪変動を用いた年代測定を指し,年輪が形成された年代を1年の精度で誤差なく特定することができます。わが国においては,年代測定手法として定着していると言っても過言ではないでしょう。しかし,広義には,樹木の年輪成長が地域的な気候要素の影響を受けて変動する特性を生...

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新たなる実験考古学を目指して

新たなる実験考古学を目指して

2018年5月   私は現在、奈文研の考古第二研究室で奈良時代の土器・土製品について調査・研究をおこなっていますが、学生時代からの専門である中国青銅器の鋳造技術についても研究を続けています。殷周青銅器の鋳造技術は、現代の技術をもってしても製作技法があきらかになっていないものもあり、世界の金工技...

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梅のはなし

梅のはなし

2018年4月   ようやく寒い季節も終わりをつげ、上着のいらない暖かい季節が到来しました。平城宮跡でも春を告げる梅や桜の花が咲き、今年もお花見のお客さんをたくさん見かけました。今回はその桜...、ではなく梅のお話しです。  「難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花」(王仁『古今...

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白い象

白い象

2018年4月   享保13年(1728)、時の将軍徳川吉宗に献上されるため、清国より長崎に2頭の象が到着しました。2頭は5歳のオスと3歳のメスで、メスの象は病のため長崎で死んでしまいましたが、オスの象はさらに大阪まで船で渡ったのち、京都を経て江戸まで2カ月以上をかけて歩いて移動しました。いわゆる「...

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古代の北極星はどれ?

古代の北極星はどれ?

2018年3月   キトラ古墳には現存世界最古とされる本格的な天文図が残されています。今回は、この天文図(以下、キトラ天文図)に描かれた星のうち、どれが古代の北極星にあたるのかを考えてみましょう。  キトラ天文図は、図の中央が天の北極にあたり、そこにはその名も「北極」という名の中国星座が描かれていま...

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塩分の摂取にご注意

塩分の摂取にご注意

2018年3月   塩分を過剰に摂取すると高血圧などのいわゆる生活習慣病のリスクが高まる、ということは良く知られたことで、減塩の調味料などもよく目にしますし、読者の方の中には日頃から減塩に気をつかわれている方も多いと思います。  ところが、塩が悪さをするのは何も人間に対してだけではありません...

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大人気!玉枕イベントの舞台裏

大人気!玉枕イベントの舞台裏

2018年2月   「大きなビーズ!」「ここの編み方が難しい…」2017年の夏、飛鳥資料館の講堂に、子供たちの声が飛び交いました。飛鳥資料館で初開催した「つくろう!!ミニチュア玉枕」のイベントの一幕です。今回は、このイベントの舞台裏をご紹介します。  「つくろう!!ミニチュア玉...

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「美濃」「美濃國」刻印須恵器はどこへいったのか?

「美濃」「美濃國」刻印須恵器はどこへいったのか?

2018年1月   岐阜県岐阜市に、国の史跡に指定されている老洞古窯跡群という遺跡があります。飛鳥・奈良時代の美濃国(現在の岐阜県南部)では最大、全国規模でも屈指の須恵器生産地であった美濃須衛古窯跡群(美濃須衛窯)の一角をなす窯跡群で、発掘調査によって3基の窯跡の存在が確認されています。古代の窯跡だ...

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新年

新年

2018年1月   年越し蕎麦を食べて除夜の鐘を聞いて、初日の出、お屠蘇におせち料理、お年玉、初詣。それなりに忙しく過ごした元旦の夜に見るのが初夢。縁起が良いのは、一富士二鷹三茄子。なんでも、徳川家康が好きだったベスト3なんだとかいう話もありますが、夢に富士山がどーんと出てくれば、確かになんだ...

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何が動いたのか―瓦からわかること―

何が動いたのか―瓦からわかること―

2017年12月   私はふだん瓦、特に複雑な文様をもつ軒瓦の研究をしています。すると時々、かなり離れた場所で、まったく同じ文様の軒瓦が見つかることがあります。ほとんどの軒瓦は、文様を彫りつけた笵(型)を粘土に押しつけて文様をつけるので、文様がまったく同じということは同じ笵を使った、ということ...

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身近でない古代

身近でない古代

2017年12月   まず、下の写真をご覧ください。「大きな白い骨」と「小さな茶色の骨」が写っています。小さな茶色の骨は奈良文化財研究所の発掘調査で出土した骨、大きな白い骨は比較するためのレプリカ標本です。何の骨だと思いますか?  この骨は、人の骨です。左側の白い骨(レプリカ標本)は、大人の...

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仏殿の荘厳

仏殿の荘厳

2017年11月   奈良には奈良時代の寺院建物が多く残っています。近年は奈良時代の姿を再現した堂塔を見ることもできます。しかし、これら新旧の建物の印象がだいぶ異なっていることはみなさんもお気づきでしょう。そこで、奈良時代の仏殿の様子をできるかぎり再現してみたいとおもいます。多くの資料がのこる東大寺...

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西隆寺とその塔

西隆寺とその塔

2017年11月   現在の近鉄大和西大寺駅北口付近に西隆寺(さいりゅうじ)という寺院があったことをご存じでしょうか? 僧寺である西大寺に対する尼寺として、神護景雲元年(767)頃に造営が開始された国家官寺ですが、その後の歴史は明確でありません。元禄11年(1698)に作られた「西大寺伽藍絵図...

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近世城跡の近現代

近世城跡の近現代

2017年10月   文化遺産部遺跡整備研究室では、平成28年12月16日に「近世城跡の近現代」をテーマに遺跡整備・活用研究集会を開催し、現在はその報告書を作成しています。  近世城跡は近代になって藩政の拠点としての機能を失い、その役割を大きく変えました。そこには行政施設や軍事施設、学校施設...

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最古の孫悟空?

最古の孫悟空?

2017年10月   『西遊記』は、中国や日本の漫画、ドラマにも繰り返し描かれ、今でも人気を集める物語です。唐の長安と言えば、『西遊記』をイメージする人も少なくないでしょう。教典を求めて天竺へ向かう玄奘三蔵は、7世紀に実在した高僧です。困難辛苦に打ち勝ち、教典を持ち帰る話は、人々の尊敬と好奇を...

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奥出雲の庭園と製鉄に関わる文化遺産

奥出雲の庭園と製鉄に関わる文化遺産

2017年9月   島根県庁のある松江市から30kmほど離れた奥出雲町は、標高およそ300mから500mのなだらかな丘陵が伸びる美しい中山間地域にあります。最近、そこに所在する絲原(いとはら)家住宅の庭園を調査する機会がありましたので、今回はその庭園と関連する文化遺産について紹介します。 &...

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大坂城石垣の「海の残念石」

大坂城石垣の「海の残念石」

2017年9月   豊臣秀吉が築いた大坂城は、大坂夏の陣での落城後、徳川幕府によって再築されました。その際、石垣石の採石・運搬・石積みといった石垣普請は公義普請(お手伝い普請)で行われ、主に西国諸藩が担当しました。再築にあたって将軍徳川秀忠は「石垣は秀吉のつくった石垣の倍の高さにするように」と...

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災害と文化財

災害と文化財

2017年8月   日本は災害の多い国です。国土交通省のホームページの災害・防災情報を見てみると、平成28年には、地震12件、風水害9件、火山活動1件、雪害3件が掲載されています。この中には熊本地震や鳥取県中部地震、台風10号による水害があり、いずれも甚大な被害が報告されています。本年も7月に...

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「茹でる」のナゾ

「茹でる」のナゾ

2017年8月   人は食べられなければ生きていけません。博物館施設での展示においても昔の料理や郷土料理の紹介は来館者に人気の高いテーマの一つであり、平城宮跡資料館でも奈良時代の貴族の食膳を復原したコーナーは人気があります。「こんなものを食べていたのか」という驚きであったり、親近感であったりを感じら...

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教科書に残る仕事

教科書に残る仕事

2017年7月   先日、中学生の息子と娘が1学期の中間テストを控えて勉強をしていたので、歴史の教科書を見せてもらいました。写真やイラスト満載で教科書もビジュアルなものとなり、その内容も藤原京の大きさはおよそ4倍、貨幣についても和同開珎以前に富本銭が使われていたとする説があります、と記載される...

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もうひとつの「長屋王墓」~『日本霊異記』を歩く2

もうひとつの「長屋王墓」~『日本霊異記』を歩く2

2017年7月   1988年に平城京左京三条二坊から出土した3万5千点の木簡は、「長屋王家木簡」と名づけられ、奈良時代の貴族の生活を垣間みる、貴重な資料として知られています。これらの木簡は、古代史研究において長屋王の名を不動のものとしたのですが、彼は奈良時代の人物としては比較的史料がゆたかで...

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古文書のハコ

古文書のハコ

2017年6月   私は文献史学の専門家で、文字を読むことを仕事にしています。当研究所での私の担当は、古い寺社が所蔵している古文書や書物の調査をすることです。ただし文字を読むといっても、調査の過程では、それ以外のものを目にすることもあります。  下の写真は、興福寺が所蔵しているものですが、お...

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彩色文化財保存へのアプローチ

彩色文化財保存へのアプローチ

2017年6月   みなさん、日々、色を意識して過ごしていますでしょうか?  色のない世界を想像してみたらどうでしょう?私たちの日常に広がるさまざまな彩色は、元となる素材に手を加えられたもの、つまり「make・メイク」されたものです。「色をMakeする」こと、それは例えば、顔を装い飾る「化粧...

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坂田寺跡出土の銭貨

坂田寺跡出土の銭貨

2017年5月   奈良県高市郡明日香村にある坂田寺跡は、鞍作氏の氏寺で、飛鳥を代表する尼寺とされる坂田寺の遺跡です。今回は、ここから見つかった地鎮の銭貨をご紹介しましょう。  1986年の発掘調査でみつかった土坑SK160からは、合計291枚もの銭貨、金箔・琥珀玉・ガラス玉などの玉類、銅鈴...

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旧石器人は

旧石器人は"粉もん"を食べたか?

2017年5月   大学院在学中から、ずっと山東、山西、河北、河南といった中国華北地域で調査をしています。この地域の主食は、伝統的に小麦粉やアワなどの雑穀の粉から作った食品(粉食)です。2週間にわたって華北各地を回って調査をした際に、最後に北京に戻ってくるまで、とうとう一粒の米も食べなかったこともあ...

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起きあがる古代の記憶

起きあがる古代の記憶

2017年4月   墨で文字のかかれた木札を木簡(もっかん)と呼びますが、文字を消すために木簡の表面から刃物で薄く削りとられた細片のことを、とくに削屑(けずりくず)と呼びます。1cmに満たないほど小さなものも多い削屑ですが、表面に少しでも文字が残っていれば、立派な文字資料です。奈文研の研究員た...

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日本庭園史話

日本庭園史話

2017年4月   森蘊という人物はご存知ですか?  ご存知ない方はまずその名前の読み方に悩まされるでしょう。蘊蓄の「蘊(うん)」と書いて「おさむ」と読みます。確かに、珍しい名前です。  森蘊は1905年、東京立川市に森家の6男として生まれました。兄弟も順番に秀、喬、禎、榮、實と、みな一文...

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空から眺める北山杉の里

空から眺める北山杉の里

2017年3月   景観研究室では、北山杉の里である京都市北区中川北山町(中川地域)を舞台に、平成26年より受託事業として「北山杉の林業景観」の調査研究をおこなっています。  調査研究の一環で、小型無人航空機(通称:ドローン)による空撮を実施しています。上空から北山杉の林業景観を眺めてみると...

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藤原宮の幢幡遺構を読み解く

藤原宮の幢幡遺構を読み解く

2017年3月   2016年夏、藤原宮大極殿院の南門の前から、大宝元年(701)の元日朝賀の儀式で立てられた7本の幢幡(どうばん)の遺構が見つかりました。『続日本紀』はその儀式の様子を次のように伝えています。  「天皇、大極殿に御(おは)しまして朝(ちょう)を受けたまふ。その儀、正門に烏形(うけい...

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その先の「記録」へ

その先の「記録」へ

2017年2月   「最近は少なくなったけど、今でも奈良公園や春日大社の近くに住んでいる人は、近くのスーパーに行くときは鹿に乗ります」   「か、からかうんじゃない」   「本当です。奈良公園のあたりに行ったら、いくらでもマイシカに乗っている人を見かけます」  平城宮跡と奈良公園界隈を舞...

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上を向いて歩こう

上を向いて歩こう

2017年2月   昨年7月に奈良国立博物館から奈文研に異動したのに伴い、職場が平城京の外京だった奈良公園から平城宮跡に変わりました。奈良時代の官人の気分を想像しつつ朝日・夕日に照らされた大極殿や朱雀門を見上げながら職場と自宅を行き来しています。  建物を見上げて最初に目につくのは屋根ではな...

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入所当時の思い出

入所当時の思い出

2017年1月   長らく研究所にお世話になりましたが、今年度末で退職となりました。作寶楼の趣旨とはやや違うかもしれませんが、ちょうどこの時期に執筆順が回ってきたので、思い出を語ることをお許しください。  私が研究所に入ったのは1981年4月でした。今でもそうですが、新人は平城宮跡発掘調査部...

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甘樫丘の穀物倉庫?

甘樫丘の穀物倉庫?

2017年1月   私たちが普段遺跡を発掘していると、土器や瓦、石器、金属器、あるいは木器などの遺物が見つかることは、皆さんご承知の通りです。これらの遺物は肉眼でも目に付きやすいので、現場において出土位置や層位を記録して回収します。ところが、こうした遺物以外にも、目につきにくい微細な遺物から、...

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古写真・発掘のススメ

古写真・発掘のススメ

2016年12月   みなさんのお宅には古~い写真が眠っていませんか?  押し入れの奥底から、おじいさんとおばあさんの若かりし頃の写真が。あるいは何でもない近所の風景写真が。それはおそらく保存状態も良くない、古びた紙焼きされた写真たちでしょう。でも、もしそんな写真が出てきたら、今一度よく観察...

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SMAP

SMAP

2016年12月   Site(遺跡) 奈文研が恒常的に調査研究をしている遺跡は、平城宮・京跡と藤原宮跡、それに飛鳥の諸遺跡です。いずれも飛鳥時代から奈良時代の遺跡で、文献記録が残されています。発掘成果と文献記録は車の両輪。互いに補い合って、さまざまな画期的成果をあげてきました。明日香村の飛鳥...

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「あめのはぶき」と鹿の皮

「あめのはぶき」と鹿の皮

2016年11月   以前、このコラムで鍛冶屋さんのお話を書いたことがあります。今回はそれに関連して、「天羽鞴(あめのはぶき)」という「鞴(ふいご)」のお話をしようと思います。鞴というのは送風装置のことで、鍛冶屋などで、鉄を真っ赤に熱したり銅を熔(と)かしたりできるように、炉に空気を送り込んで...

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増田町の民家

増田町の民家

2016年11月   建造物研究室では2014,15年度に秋田県横手市増田町の重要伝統的建造物群保存地区に所在する2棟の民家の詳細調査を実施しました。秋田県内陸南部の横手盆地は日本有数の豪雪地帯として有名です。  増田町は中世の増田城下町に端を発する集落で、増田城の廃城後も周辺の物資の集散地として栄...

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木簡の再利用ここにきわまれり

木簡の再利用ここにきわまれり

2016年10月   木簡にはさまざまな形のものがあります。中でも、え!、これも木簡?、と思わせる代表格は、軸の木簡(写真1左)でしょう。どこに文字があるか、おわかりでしょうか?  円柱状に加工された白木の軸で、文字は両端の直径20㎜足らず(この木簡はまだ太い方)の木口(こぐち)に書かれてい...

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灰色文献

灰色文献

2016年10月   灰色文献と言っても、本が灰色なわけではありません。書店で簡単に購入できたり、多くの図書館に所蔵されたりしていて、誰でも読むことができるのが白色文献、関係者以外まったく入手できないか存在自体が公表されていない文献を黒色文献と呼ぶ時に、その中間にあたるのが灰色文献です。  ...

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平城宮跡東方官衙の檜扇(ひおうぎ)

平城宮跡東方官衙の檜扇(ひおうぎ)

2016年9月   平城宮の東側には奈良時代の役所の区画が南北に連なっていた地区があります。平城宮跡東方官衙地区と呼んでいるこの範囲のうち中央よりやや南の区画を2008年12月から2009年2月にかけて発掘調査したところ、大きな楕円形の土坑が見つかりました。この土坑は東西約11m、南北約7mの大きさ...

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四分遺跡と石庖丁

四分遺跡と石庖丁

2016年9月   藤原宮跡には長閑な田園風景が広がり、私も通勤の傍ら、四季折々の姿を目にしています。代掻きや田植えといった作業風景、秋には黄金色に染まる稲の生長が四季を感じさせてくれます。使う道具こそ異なるものの、こうした情景は2000年以上昔の弥生時代と同じだったのでしょう。興味深いことに...

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最古級都市のモデル

最古級都市のモデル

2016年8月   日本で最古級の都市(都城)といえば、藤原京のことですが、今日はユーラシア大陸のずっと西、私が長らく研究してきた西アジアのお話です。  西アジアというと、乾ききった沙漠とティグリス・ユーフラテス両大河のイメージでしょうか?しかし、森林が比較的卓越した肥沃な土地もまた、東地中...

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平城宮跡を体感する

平城宮跡を体感する

2016年8月   みなさんは、30年前の平城宮跡をご存じでしょうか。この頃は、内裏周辺のツゲの植栽による柱位置の表示、第二次大極殿の基壇の復原など、整備もまだ部分的で、大半は広い野原でした。近年では、発掘調査成果の蓄積を受け、兵部省・式部省では柱および壁や塀などを立体的に立ち上げる半立体復原...

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空地がいっぱい?まだまだ未知の平城宮

空地がいっぱい?まだまだ未知の平城宮

2016年7月   みなさんは、平城宮の宮城図をご覧になったことはあるでしょうか?(まだの方は当ホームページからダウンロードできますのでどうぞ)宮城図は奈良時代前半のものと後半のものがありますが、どちらも描かれている建物の数が少ないことにお気づきになるでしょう。  …平城宮は建物...

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おもしろさがいっぱい!デジタルメディアを用いた展示

おもしろさがいっぱい!デジタルメディアを用いた展示

2016年7月   博物館や美術館を訪れると、解説映像を目にしたり音声ガイドを使ったりする機会があると思います。博物館施設では、それらのデジタル技術を用いたコンテンツ等を「デジタルメディア」と呼んでいます。近年、世界中でデジタルメディアを取り入れたユニークな展示が行われており、博物館施設になく...

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古墳時代の刀の楽しみ方

古墳時代の刀の楽しみ方

2016年6月   昨年は流行語大賞に「刀剣女子」がノミネートされるなど、日本刀ブームが世を賑わせました。博物館の日本刀展示コーナーにも多くの若い女性の姿が見受けられ、「古墳時代の刀剣」を主な専門分野とする筆者は、刀剣への注目度が上がることを密かに喜んでおりました。ところが悲しいかな、筆者が研...

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木簡の削りくずと欠けた文字

木簡の削りくずと欠けた文字

2016年6月   鉛筆で書いた文字を消したいとき、消しゴムを使って消しますよね。墨で書く木簡でも、一度文字を書いてしまっても消すことができます。文字のある部分を小刀で削り取り、新しい面を出して再利用するのです。消しゴムのカスは黒くまるまってしまうだけですが、木簡の消しカス=削りくずには文字が...

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東大寺正倉院宝物と中央アジア

東大寺正倉院宝物と中央アジア

2016年5月   東大寺の正倉院宝物といえば、美しく装飾された楽器や色鮮やかな錦などが思い浮かびますが、刀や弓矢など武器も伝わっています。ここでご紹介したいのは金銀鈿荘唐大刀という儀仗用の大刀です(図1)。正倉院宝物の台帳である国家珍寶帳には、唐大刀13口と唐様大刀6口の記載があります。唐大...

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瓦はお寺の履歴書

瓦はお寺の履歴書

2016年5月   寺院や宮殿の遺跡を発掘すると、時期が異なる瓦が多く出土する場面に出合うことがたびたびあります。寺院をはじめ、瓦葺の建物は長い年月にわたって建っていたものが多く、修理などにともなって瓦も葺き替えられました。ところが、壊れない限り多くの瓦は再利用されるため、結果として新旧おりま...

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骨の標本が教えてくれること

骨の標本が教えてくれること

2016年4月   博物館の展示で、昔の人々が狩りをして動物を捕らえている様子が紹介されているのを見たことはありませんか。そこではシカやイノシシのように、狩りの対象となった動物の種類が具体的に説明されていると思います。  遺跡からは、当時の人々が残した動物の骨が出土することがあります。これらを調べる...

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東と西の鏡

東と西の鏡

2016年3月   みなさんはどのような鏡をお持ちでしょうか?今の鏡はアルミニウムや銀を蒸着したガラスで作られていますが、以前は銅に錫を加えた青銅で作られていました。  中国では西周末(約3000年前)ごろに青銅製の鏡が登場します。鏡は円形で、姿を映す表の面はつるつるに磨かれていますが、裏の面には様...

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1つの展示ができるまで

1つの展示ができるまで

2016年3月   皆さんは、平城宮跡資料館の展示をご覧になったことはありますか? この資料館は、奈文研の約50年にわたる平城宮・平城京の発掘調査成果を、展示をとおして皆さんに紹介する施設です。開館日(原則 月曜日および年末年始を除く日)ならいつでも見ることができる常設展示のほか、子ども向けの...

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縞の間からみえる世界

縞の間からみえる世界

2016年2月   言葉にはその国の文化をあらわす特徴が含まれています。その文化にとって重要だったものの名残が言葉として残っています。たとえば、牛はヨーロッパの言語圏では、雄牛、雌牛、子牛とそれぞれ区別してよんでいます。また、アラビア語圏でも、雄ラクダ、雌ラクダ、若いラクダ、大人のラクダ、出産...

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灰汁(あく)なき探求

灰汁(あく)なき探求

2016年2月   「石灰」「草木灰」「温泉」、この三つは一見すると何の関連もないように思えますが、共通するキーワードがあります。「アルカリ」です。  アルカリと聞いて、みなさんは何を思い浮かべますか?寒い季節にゆっくりとあたたまりたい温泉でしょうか。あるいは年末に大掃除された方は、洗剤かもしれませ...

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災害痕跡データベース~埋蔵文化財における新たな取り組み~

災害痕跡データベース~埋蔵文化財における新たな取り組み~

2016年1月   地震、雷、火事、親爺・・・最近めっきり聞かなくなったことばですが、世の中で特に怖いとされているものを語呂よく順に並べた慣用句です。この「親爺」、実は台風に相当する大山風(おおやまじ)や大風(おおやじ)が元だったという説もあり、自然災害の怖さを並べたのか、はたまた昔の親爺の怖...

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日本の漢字、中国の漢字

日本の漢字、中国の漢字

2016年1月   同じ漢字文化圏に属する日本と中国ですが、同じ漢字が違う意味で使われることが往々にしてあります。日本の「手紙」が中国ではティッシュ、あるいはトイレットペーパー、「湯」が中国ではスープ、「はしる」の意味の「走」が中国では「ある(歩)く」の意味であるといった具合に。実は、日中において漢...

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古代の木簡でよく使われた漢字

古代の木簡でよく使われた漢字

2015年12月   古代の人が書いたもの、といえば、何とも難解なイメージがありませんか。しかも、飛鳥藤原京や平城京の時代には、まだ今のようなひらがなやカタカナがなく、すべて漢字で、都で発見される木簡にも、たくさんの漢字が書かれています。そんな世界に飛び込むには、漢字の勉強での苦い思い出がよみがえる...

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瓢箪から「ひしゃく」

瓢箪から「ひしゃく」

2015年12月   最近は、神社や仏閣の手水舎(ちょうずや)等でしか見ることがなくなってしまった「ひしゃく(柄杓)」ですが、柄杓の名前の由来は、瓢箪の別名、「ひさご」からきているそうです。ひさこ…ひさく…ひしゃく、確かに似ていますね。もともとは、「ひさご」を刳り抜...

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石を割る

石を割る

2015年11月   現代日本では、建物の基礎や河川の護岸など堅牢で大量に供給できる資材としてコンクリートを用います。型枠に流し込めば自由自在に形をデザインすることができ、今日の土木工事になくてはならない存在です。  コンクリートが普及する以前は、石材を用いました。必要量の石を切り出し、一石...

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シンメトリーなはずなのに

シンメトリーなはずなのに

2015年11月   人間をはじめ鳥、魚、虫など動物の身体の形は、鮃(ひらめ)や鰈(かれい)などの例外はありますが、基本的には背骨などを軸にして左右対称です。そうなった理由はわかりませんが、やはり構造的に安定するのでしょう。デザインの世界ではこれを「シンメトリー」と呼び、紀元前から現代に至るまで...

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続けたい庭園史の研究

続けたい庭園史の研究

2015年10月   日本庭園の歴史の研究を30年以上続けてきました。当初、京都市文化財保護課に勤務していたときには、文化財行政に従事するかたわら、おもに近代京都の庭園について勉強していました。1987年に奈文研に入所してからは、平城宮跡や飛鳥・藤原宮跡の発掘調査に携わったため、発掘調査の成果...

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「ゆ」を掘る

「ゆ」を掘る

2015年10月   温泉は命の洗濯。老若男女一度は、温泉につかり、リフレッシュした経験があるでしょう。環境省の調べでは、2014年3月末現在3,169もの温泉地が日本には存在し、世界有数の温泉大国です。  では、いつ頃から日本人は温泉に入浴していたのでしょうか。『日本書紀』『続日本紀』『万...

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尻尾は1つか2つか!?

尻尾は1つか2つか!?

2015年10月   鴟尾(しび)と聞いて、すぐに形を思い描ける人はどれくらいいらっしゃるでしょうか。鴟尾は、お寺などの瓦葺き屋根のてっぺん、鯱(しゃちほこ)と同じく大棟の両端にのっている角(つの)のようなものです。2010年に復原された平城宮第一次大極殿にも金色に輝く金銅製鴟尾がのっています。鯱...

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オーテのある島

オーテのある島

2015年9月   香川県高松市の女木島は、高松港からフェリーに乗って20分ほど。瀬戸内海に浮かぶこの島の海岸付近には、「オーテ」と呼ばれる石垣があります。その石垣は、冬の季節風、さらにそれとともに吹き込む海水の飛沫から民家を守るために築かれたものです。島の独特の気象条件のなかで、暮らしを育んでいく...

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石神遺跡と遠隔地から運ばれた土器

石神遺跡と遠隔地から運ばれた土器

2015年9月   古代において、饗宴は王権に対する服属を確認する儀礼であり、支配政策として重要な位置を占めていました。『日本書紀』斉明紀の中には、「甘樫丘の東の川原に須弥山を造って、陸奥と越の蝦夷を饗応した」という記載があります。他にも、「須弥山を象ったものを飛鳥寺の西に作り、都貨邏人を饗宴した」...

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あまちゃん2

あまちゃん2

2015年8月   前回のあまちゃん(2013年5月掲載)では、アワビをめぐって人と海との関わりをひもときました。今回はまた違った題材から、その歴史を考えてみたいと思います。  海と親しむには、ダイビングが近道です。意外なことに、ウミウシが女性に人気です。カラフルな姿に癒されるようで、カープ女子なら...

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古代人の手紙

古代人の手紙

2015年8月   学生の頃、あるテレビ番組で、私の母校のトイレットペーパーは硬い、と紹介されているのを観たことがあります。学内の業務で出る膨大な量の反古紙を利用して作っているから、ということでした。  古代社会でも、このあたりの事情は現代と同様だったようです。奈良時代の人びとは、用を足したあと、籌...

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奈良時代における古墳

奈良時代における古墳

2015年8月   平城宮の北側には、大型の前方後円墳が多数存在しています。これらは「佐紀盾列古墳群」と呼ばれ、概ね4世紀後半から5世紀中頃にかけて築造されたと考えられています。奈良時代の人々も、これらの古墳を日常的に眺めていたと思われますが、当時の人々はこれらの古墳にどのような想いを抱いてい...

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平城宮の祥瑞

平城宮の祥瑞

2015年7月   天は為政者の政治が良ければその褒美に祥瑞をもたらして徳治の証とし、悪ければ災害や日食月食などの異変をもたらして苛政に警告をする。為政者は不祥事があれば自らの不徳を恥じるのであった。そんな天人相関思想を奈良時代には大陸から受容していました。祥瑞には、甘露、慶雲、鳳凰、三足烏、赤雀、...

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自然を使いこなした都市の営み

自然を使いこなした都市の営み

2015年7月   銀閣寺の銀沙灘、詩仙堂や南禅寺塔頭の枯山水庭園など、中世から近世にかけて京都でつくられた庭園には、「白川砂」と呼ばれる、白くきらめく砂が多用されてきました。一方、明治末頃から昭和初期にかけて、琵琶湖疏水からの水を利用して南禅寺界隈につくられた無鄰庵、碧雲荘、對龍山荘といった別邸群...

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木々をたずねて三千里

木々をたずねて三千里

2015年6月   奈良と言えば東大寺の大仏。その大仏を収める大仏殿の大きさは、桁行(横幅)50.0m、梁行(奥行)50.5m、高さ46.4mで、世界最大の木造の建物です。東大寺大仏殿は奈良時代中期、天平宝字2年(758)に創建されましたが、この創建大仏殿は治承4年(1180)の平重衡の南都焼打ちに...

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古代瓦のコピーとエラー

古代瓦のコピーとエラー

2015年6月  私の出身地の北海道では屋根に瓦はほとんど使われておらず、大学に入学して関西に移り住んだ当初、家の外観の違いに驚いたことを覚えています。以来15年近くが経ち、さすがの私も瓦屋根を見るだけでは驚かなくなってしまいましたが、まだまだ瓦葺きの建物が多くなかった奈良時代には、十代の私がそうし...

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どっちが近道?

どっちが近道?

2015年5月  「こっちが近道だよ」  「いやいや、こっちの方が近道だよ」 こういう議論をしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?  どちらのルートが近道なのか...普通は歩いてみるまでわかりませんが、最近はコンピューターを用いることで、ある程度の答えを導き出せるようになっています。 ...

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庭園の記録

庭園の記録

2015年5月  庭園は、石・草木・水をはじめとする様々な自然の素材が土地と一体となって構成される文化財であり、草木の成長や風雨による浸食などにより刻々と変化することを宿命としています。庭園の魅力が、季節や気象条件によって様々な姿を見せてくれるように、「変化すること」は庭園の価値そのものです。一方で...

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箸を使う

箸を使う

2015年4月  最近、我が家では子どもが箸の使い方を練習しています。まだ慣れないため、上手に食べ物を掴むことができず、イライラしておかずを突き刺したり、あきらめて手づかみで食べたりしています。  現代の日本では、箸を使ってご飯やおかずを口に運ぶ食べ方が普通ですが、この習慣はいつからなのでしょうか?...

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黒い虫の正体は・・・

黒い虫の正体は・・・

2015年4月 「黒い虫みたいなのが出た!」  2012年6月のある日、奈文研の木器整理室で聞こえた一言です。2009年冬、平城宮東方官衙の調査で、大きなゴミ穴や糞便遺構(ウンチがたまった穴)が見つかりました。その土をコンテナ2800箱分持ち帰り、2015年になった今も木簡などを見つける水洗選別作業...

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古社寺修理技術者たちの近代和風建築

古社寺修理技術者たちの近代和風建築

2015年3月  春日野にたたずむこの建物、先々代の奈文研本庁舎です。奈文研が設立された昭和27年(1952)から、一昨年まで本庁舎としていた旧県立医科大学附属奈良病院の建物に移転した昭和55年まで庁舎としていました。昭和58年には重要文化財に指定され、現在も奈良国立博物館の仏教美術資料研究センター...

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6畳から古代をさぐる

6畳から古代をさぐる

2015年3月  6畳、約10㎡。部屋の広さの話でしょうか?  いえいえ、発掘調査の調査面積の話です。奈良文化財研究所では1,000㎡以上の広い調査区をもつ発掘調査もおこないますが、このように狭い面積の発掘調査もおこないます。小面積の発掘調査からどのようなことがわかるのでしょうか? 法華寺を例...

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飛鳥寺の美豆良(みずら)飾り

飛鳥寺の美豆良(みずら)飾り

2015年2月  飛鳥寺は、崇峻元年(588年)に造営が始まった日本最初の本格的な寺院です。その建立にあたっては、仏舎利、僧、瓦博士や造寺工など様々なモノや知識・技術をもった人々が百済から渡来したことが『日本書紀』に記されています。そのことは、日韓で不断に進められてきた発掘調査によっても確かめ...

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古代のリサイクル -鋳型によるガラス小玉の生産-

古代のリサイクル -鋳型によるガラス小玉の生産-

2015年1月  「たこ焼き型鋳型」と呼ばれることもある特殊な土製品をご存知でしょうか。まさに現代のたこ焼き器のように片面にたくさんの穴のあいた板状の土製品で、古墳時代から奈良時代の遺跡から発見されています。この土製品、実はガラス小玉を作るための鋳型として使用されていました。鋳型といっても、と...

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藤原京の京域

藤原京の京域

2015年1月  奈文研が継続的に調査をおこなっている藤原京は、日本初の本格的な中国式都城です。  藤原京の中心となる藤原宮は約1㎞四方の広さで、その宮の周囲には条坊道路が碁盤目状に通っていました。  では藤原京は一体どのくらいの大きさだったのでしょうか?  実は、藤原京の大きさはまだわ...

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藤原宮内先行条坊の謎

藤原宮内先行条坊の謎

2014年12月  ふしぎなことに、藤原宮の下層では藤原京に敷設されたものと同じ規格の条坊道路が通されています。藤原宮に先行する条坊という意味で「(宮内)先行条坊」とよんでいます。 分かりやすい例で見てみましょう。藤原宮大極殿です。下の写真は、大極殿の北側でおこなった発掘調査の様子で、大極殿址を北か...

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木簡の文字の向こう側―「采女」の合字―

木簡の文字の向こう側―「采女」の合字―

2014年12月  私が所属する史料研究室の主な仕事に、木簡の解読があります。今とほとんど同じ漢字を使っているとはいえ、およそ1300年前の人びとが書いた文字を読み解くのは、なかなか一筋縄ではいきません。私が出会った中で印象に残っている木簡を1点、ご紹介したいと思います。  その木簡は、平城...

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文化財の展示

文化財の展示

2014年11月  あなたは博物館・美術館で展示を見ることは好きですか?  私は、奈良文化財研究所の展示施設である飛鳥資料館で働いています。資料館の仕事は年数回行われる特別展・企画展の準備のほか、常設展示の管理、収蔵資料の整理、収蔵庫などの維持・整備、来館者の案内、文化財の調査・研究など、実に多...

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平城宮跡を横切る近代遺産

平城宮跡を横切る近代遺産

2014年11月  平城宮跡ならではの風景とは?と聞かれるとさまざまな風景が頭に浮かぶかと思います。そのひとつに平城宮跡を横切る近鉄奈良線の風景をあげる方も多くいるのではないでしょうか。私も初めて奈良を訪れた時、大和西大寺駅を出発して突然外の様子が変わり、車窓越しに平城宮跡がのびやかに広がる風景...

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鳥と信仰

鳥と信仰

2014年10月  古今東西、私たちの生活には多くの動物たちが関わっています。たとえば犬、馬、牛、そして鳥です。こうした動物たちは、家畜や食用としてさまざまな場面で私たちの生活を支えてくれています。と同時に、祭祀や信仰の対象にもなったのです。  鳥への信仰は古くから世界中でみられ、多くの神話...

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製作地をさぐる難しさ

製作地をさぐる難しさ

2014年10月  遺跡から出土した遺物が、どこで製作されたのかは、常に研究者が意識する課題の一つです。その遺跡が工房などの製作址であれば別ですが、遺物は廃棄場所や使用場所から出土することが多いため、にわかに製作地がわかるケースは非常に少ないと言えます。  考古学の研究者が製作地を追求する際には、ま...

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瓦礫は語る

瓦礫は語る

2014年9月  瓦礫の山というと、廃材が山積している様子が思い浮かびます。奈良文化財研究所の収蔵庫はまさに瓦礫の山です。といっても、もちろんコンテナには入っていますが。収蔵庫の瓦は、瓦礫といえども飛鳥時代から奈良時代を中心とし、近代にまでいたる大切な考古資料です。つまらないものの例えとして瓦...

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「古代建築」の「現代」

「古代建築」の「現代」

2014年9月  奈良県は文化財の宝庫です。仏像、建造物、遺跡、歴史資料など、まさに文化の中心であったことを実感させられる場所です。日本の歴史を伝える文化財を求めて、日本国内だけではなく、海外からも多くの観光客が訪れる場所です。  建造物に注目してみると、奈良時代以前に建てられたとする建造物が奈良県...

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飛鳥の民家

飛鳥の民家

2014年8月  飛鳥資料館で今夏、開催中の写真コンテスト作品展『飛鳥の甍』、もうご覧いただけたでしょうか?今年で5回目をむかえた写真コンテストは、毎回テーマを決めて作品を募集しています。様々な視点で切り取った飛鳥の風景を通して、あらたな魅力の発見・発信につなげたいと考えております。  ここでは、今...

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建物か、塀か・・・

建物か、塀か・・・

2014年8月  発掘調査を実施すると柱穴や溝、井戸など、かつて人が活動していたことを示す遺構を検出することができます。学生時代、初めて発掘調査に参加した際、土坑を検出、掘り下げたところ、板を井桁に組み合わせた井戸であることが判明、その底からは当時の生活を示す土器や木製品などが出土、肌で歴史を実感し...

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出土品と伝世品

出土品と伝世品

2014年7月  あたりまえのことですが、土の中から出てきたものが出土品。だから、遺跡を掘って出てきたものは、みな出土品ということになりますが、世の中には古いものであっても埋まることなく大事に保存されてきたものがあり、それを伝世品と呼びます。  4月の人事異動で博物館から研究所へ転任してきて、久しぶ...

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食堂の裏手

食堂の裏手

2014年7月  社員食堂(しょくどう)の話ではありません。「じきどう」と読みます。  古代寺院においては、食堂は僧たちが一同に集って食事をする重要な施設でした。2013年度に当研究所が発掘した薬師寺の食堂も、例外ではありません。発掘調査によって明らかになった食堂の遺構は、東西47.1m、南北21....

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遺跡保存と土と水

遺跡保存と土と水

2014年6月  ここ数年、夏になると熱中症のニュースをしばしば耳にするようになりました。郊外にくらべて都市部の気温が高温になる、いわゆるヒートアイランド現象がその一因であることはご存知の方も多いことと思います。地表をアスファルトなどの人工の被覆物で覆うことで、地表に占める土の割合が都市部を中心に減...

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大雪の影響

大雪の影響

2014年6月  今冬は、日本各地で大雪に見舞われました。被害にあわれた方には、謹んでお見舞い申し上げます。  我々の研究室がある奈良市内でも、膝くらいまでの積雪があり、そのため交通機関の乱れなどがありました。しかし、例年このような雪模様にならない奈良では、おそらく雪を楽しんだ人も多かったのではない...

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「奈良といえば鹿」だけではない!

「奈良といえば鹿」だけではない!

2014年5月  「奈良といえば鹿」と言われるように、奈良は鹿のデザインであふれています。その代表は、平城遷都1300年祭や奈良県のマスコットキャラクターである「せんとくん」でしょう。せんとくんには立派な鹿の角が生えていますね。  奈良の町を歩いていると、鹿以外にも見かける動物がいます。それはラクダ...

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気候変動で危機に瀕する文化遺産

気候変動で危機に瀕する文化遺産

2014年5月  今年(2014年)の2月から3月にかけて、私は文化庁の事業(文化遺産保護国際貢献事業・専門家派遣)で大洋州のツバル、キリバス、フィジーの3か国に行ってきました。その目的は、近年の急激な気候変動によって、危機に瀕する可能性のある文化遺産についての調査でした。  世界をとりまく問題のな...

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明らかになった設計原理-高松塚古墳の石室-

明らかになった設計原理-高松塚古墳の石室-

2014年4月  地下に埋もれている遺跡を発掘するにあたっては、予め周辺の調査成果や検出が予想される遺構の類例などを把握した上で、調査に臨みます。2006年10月から2007年9月にかけて実施した高松塚古墳の石室解体作業では、石室の石材ごと壁画を取り出すという海外にも前例のない困難な作業に直面するこ...

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硯を読む

硯を読む

2014年4月  現在、われわれが墨をする際に使う硯の多くは、石でできています(石硯・せっけん)。ところが、日本古代の硯の多くは焼き物でした(陶硯・とうけん)。陶硯が主流だったのは、古代東アジアのなかでも日本だけでした。  さて、多種多様な古代の陶硯は、円形を呈するものが多く、円い硯の周囲に動物の脚...

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遺跡をはかる

遺跡をはかる

2014年3月  春遠からじ、といえどまだまだ寒い日がありますね。寒がりの私は外に出るだけでも嫌な季節ではありますが、日々奈文研では発掘調査が進められています。  発掘調査というと竹べらで慎重に土を掘っていくイメージがありますが、それは作業のほんのひと時でしかありません。多くの時間を要する作業に記録...

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家の作りようは冬を旨とすべし?

家の作りようは冬を旨とすべし?

2014年3月  中国の天津市にある遼代の楼閣建築、独楽寺観音閣を見に行ったときのこと、昼食をとりに近くの食堂へ行きました。そこは大鍋料理を看板に掲げていて、円卓の中央に大きな鍋が据えてありました。その円卓の足元を見ると焚き口が付いていて、直火で鍋を加熱しています。焚き口の反対側からは、床を這って煙...

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消えた煉瓦の行方

消えた煉瓦の行方

2014年2月  奈良時代前半、平城宮の中心部である大極殿の前面には、煉瓦の積まれた巨大な壁が、高さ約2m、幅約100mにもわたり築かれていました。専門用語では、この煉瓦は「磚(せん)」とよばれ、磚の積まれた壁は「磚積擁壁(せんづみようへき)」とよばれます。この磚積擁壁は、大極殿を一段高い位置にみせ...

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史跡等の意義を伝えるための空間デザイン

史跡等の意義を伝えるための空間デザイン

2014年2月  当研究所本庁舎の近くを走る近鉄奈良線が開通したのは、今から100年前のことだそうです。ちょうどその頃、平城宮跡における最初の整備事業が、1913年に結成された奈良大極殿阯保存会により行われています。1922年の史跡指定後もさらに整備され、その範囲は第二次大極殿を中心として内裏南半と...

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温度や湿度に注意―文化財の展示・保管―

温度や湿度に注意―文化財の展示・保管―

2014年1月  今日は寒いなと思って窓から外を眺めると雪が舞っていました。日本には春夏秋冬があり、四季折々の景色に感動することもしばしばですが、夏は蒸し暑く、冬は寒く乾燥するという環境は、文化財には少なからず注意が必要となります。  多くの文化財は温度や湿度にとても敏感です。材質による違いはありま...

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天平人の腹をさぐる

天平人の腹をさぐる

2013年12月  2009年の1月、平城宮東方官衙地区でウンチが発見されました。円形の穴がいくつかみつかり掘り下げてみると、クソベラとウリの種がたくさん出てきたのです。ウンチだとわかったのは土の中から多量の寄生虫の卵が検出されたからです。 寄生虫のなかには人間のお腹の中で成虫になり卵を産む種類がい...

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「塩」の話

「塩」の話

2013年12月  吉田兼好の『徒然草』に「塩」は何偏か?と聞かれた人が「土偏」と答えて笑われたという話があります。「しお」の漢字は正しくは「鹽」で、「塩」はもともと俗字でした。このエピソードは、鎌倉時代にはすでにこれが俗字だと知らない人もいたことを物語ります。  「塩」は現代の東アジアでも日本でし...

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『日本霊異記』を歩く

『日本霊異記』を歩く

2013年12月  ここ数年、月に1回の割合で、1日20㎞前後大和盆地を歩いています。アラフォー世代にさしかかり健康が気になりはじめた訳ではなく、薬師寺僧景戒(きょうかい)が、平安時代初めに編んだ日本最古の仏教説話集、『日本霊異記(にほんりょういき)』の注釈書を作る仕事にかかわり、説話の故地を訪れ、...

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平城京の塔の景観

平城京の塔の景観

2013年11月  近年、「景観」という言葉をよく耳にします。また、新しい文化財として、文化的景観というジャンルもできました。景観とは移り変わってゆくことに特徴がありますので、過去の景観を考える場合には、一体いつの景観なのかに注意する必要があります。  現在、奈良市役所には平城京の1/1,000模型...

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笵(はん)で押す

笵(はん)で押す

2013年10月  「判で押したような」というと、同じことの繰り返しで、変化のないさまのこと。この「判」とは、ハンコのことです。なるほど、ハンコを押したらいつも同じになりますね。  私たちが藤原京や平城京を発掘していると、屋根の軒端の一番低いところに使われた軒瓦がよく見つかります。軒瓦には蓮の花や唐...

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文字の書き方

文字の書き方

2013年10月  近年ではパソコンが普及し、鉛筆やペンを握る機会は減ってきました。ましてや、毛筆で文章を書く必要は少ない時代です。  歴史研究室では、お寺などに遺された、古い書物や文書を調査しています。それら毛筆の資料からは、文章の内容のみならず、文字の雰囲気・モノとしての特徴も感じ取ることが出来...

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埋もれゆく近代の庭園

埋もれゆく近代の庭園

2013年9月  奈良時代、平城宮の東院に営まれた庭園や平城京左京三条二坊六坪の庭園、そして、阿弥陀浄土院の庭園などに、明らかなる端緒を示した日本の庭園文化は、平安時代において、現在の京都に確固たる基盤を成し、やがて、中世、近世を通じて日本全国に展開し、世界の中でも独特な「日本庭園」を育んできました...

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リサン、ド=シャルダンのあとを訪ねて

リサン、ド=シャルダンのあとを訪ねて

2013年9月  リサン(Emile Licent 1876-1952)とド=シャルダン(Pierre Teilhard de Chardin 1881-1955)は、ともにイエズス会のフランス人神父。解放前、中国各地で古生物、地質、考古の調査研究に活躍。リサンは中国旧石器の発見者(1920年甘粛省...

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鍛冶屋さんの利き腕

鍛冶屋さんの利き腕

2013年8月     しばしも止まずに槌打つ響    飛び散る火の花 はしる湯玉    ふいごの風さえ息をもつがず    仕事に精出す村の鍛冶屋  この歌を聴いて情景が目に浮かぶ方は、失礼ながらかなりのご高齢か、よほど鍛冶屋に興味のある人であろう。これは、熱した鉄を鉄槌で叩いて農器具などを作る、鍛...

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新しい「光」

新しい「光」

2013年8月  文化財の調査研究には様々な「光」や「電波」が使われています。地下の遺跡を探査する地中レーダー探査、遺物の内部の状態を映し出すX線透過試験やX線CTスキャン、木簡の文字などの解読に使われる近赤外線カメラ、遺物の材質分析には、X線、紫外線、可視光線、赤外線などが利用されています。これら...

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大極殿見学の栞に

大極殿見学の栞に

2013年7月  2010年に復原が完成した平城宮第一次大極殿は、遷都1300年祭が終わったあとも、多くの見学者で賑わっています。大極殿から南に朱雀門を望めば、平城宮の中心を占めるこの儀式空間の広がりを実感することができますが、私にとって意外だったのは、平城宮の横方向(東西)の広がりに対して、朱雀門...

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かたおもいの歌と土器

かたおもいの歌と土器

2013年7月 思い遣る すべの知らねば かたもひの 底にそ我は 恋ひなりにける   土垸の中に注せり  上は万葉集巻四 707番の歌で、粟田女娘子(あわためのいらつめ)が若き日の大伴家持に贈った歌です。家持への「片思い」を「かたもひ」という土製のうつわに掛け、その伝わらぬ思いを吐露したもので、いわ...

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アク・ベシム遺跡

アク・ベシム遺跡

2013年6月  中央アジアには旧ソビエト連邦を構成していて、現在は独立している共和国が5つある。そのひとつキルギス共和国は、東部に位置し中国とも国境を接する国で、天山山脈など万年雪をいただく高山地帯を擁している。首都ビシュケクから東に向かうと、幅の広いチュー川の谷に農地・牧草地が広がり、その中に小...

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古代の方位測定法

古代の方位測定法

2013年6月  平城京をはじめとする都城や寺院、道路など、古代の土木建造物には、真北や真東西に方位を合わせたものが少なくありません。工事にあたって測量がおこなわれたことは確実です。では、具体的には、どのような方法で方位を測ったのでしょうか。  いまの私たちなら、方位磁針(コンパス)を使うのが簡便で...

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あまちゃん

あまちゃん

2013年5月  奈良時代の貴族の食卓には、さまざまな山海の珍味が並びました。シカやイノシシ、タイやアユ。なかでもアワビは、「長屋親王宮鮑大贄十編」の木簡にみるようにどんな食材よりも高級なものとして珍重されました。食通で知られる北大路魯山人も、アワビに関して多くの著作を残しており、筆まめぶりに驚きま...

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飛鳥寺と奈文研-終わらない調査研究と保存

飛鳥寺と奈文研-終わらない調査研究と保存

2013年5月  いまは田園風景がひろがる飛鳥の地。その飛鳥の核といってもよい飛鳥寺は、わが国で最初の本格的な仏教寺院とされています。『日本書紀』には崇峻元年(588)、百済から僧、技術者たちとともに仏舎利がもたらされ、「始めて法興寺を作る。」と記されています。この法興寺が、飛鳥寺のことです。各地で...

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