奈良文化財研究所に関するさまざまな情報を発信します。

大人気!玉枕イベントの舞台裏

2018年2月 

 「大きなビーズ!」「ここの編み方が難しい…」2017年の夏、飛鳥資料館の講堂に、子供たちの声が飛び交いました。飛鳥資料館で初開催した「つくろう!!ミニチュア玉枕」のイベントの一幕です。今回は、このイベントの舞台裏をご紹介します。

 「つくろう!!ミニチュア玉枕」は、阿武山古墳(大阪府高槻市)の副葬品の玉枕を、ミニチュアでつくるイベントです。昭和9年(1934)、工事中にみつかった阿武山古墳は、十分な調査もされないまま埋め戻され、飛鳥時代につくられた玉枕の実物は今も地中で眠っています。しかし、昭和57年(1982)、牟田口章人氏(当時朝日放送、現帝塚山大学教授)が、阿武山古墳の遺品を撮影したX線写真と実体写真を発見し、猪熊兼勝氏(当時飛鳥資料館学芸室長)、ガラス工芸家の由水常雄氏らとともに、大・中・小3種類のガラスを一本の銀線で編みあげた、玉枕の復元品を製作しました。

 玉枕の編み方は一見複雑そうですが、コツをおさえれば、ビーズでミニチュアを再現することができます。そこで、牟田口氏は、帝塚山大学でミニチュア玉枕を編む体験を通して、飛鳥時代の技術の高さを伝える授業もおこなってきました。

 飛鳥資料館でも、ミニチュア玉枕づくりを通して、飛鳥時代をより身近に感じてもらいたい、という思いで、牟田口氏の協力を受け、夏休みイベントを開催することにしました。大学の授業では、2回に分けてミニチュア玉枕を製作しています。しかし、子供も参加できるイベントとするには、2時間程度のプログラムで完成させたいところです。そこで工夫したのが、わかりやすい作り方の説明、会場の雰囲気づくり、そしてスタッフの体制です。

 まず、一目でビーズと糸の通し方がわかるように、カラフルな模式図や写真を多用したマニュアルを考案しました。色づかいや文字のデザインも、絵本や工作の本を参考に、子供達のワクワク感を引き出しつつも、飛鳥の歴史や玉枕のイメージを損なわないように意識して、明るめの青色を基調に、アクセントで赤や黄色などの、はっきりした色を使いました。「つくりかたの解説がわかりやすい」と配布資料を見ながら、なんと一時間弱で完成させた参加者もいました。

 会場では、つくる意欲をスムーズな作業につなげることと、イベント中の参加者同士の交流しやすさを目的に、5~6人が一つのテーブルを囲んで作業するようにしました。参加者の年齢層なども参考に事前にグループ分けをし、テーブルには必要な道具類を使いやすいように配置しました。イベントの最中には、親子でつくり方を確認しあったり、初対面の参加者同士が玉枕の使い方を話し合う光景などもみられました。

 スタッフは、学芸室の研究員・解説員に加え、帝塚山大学の学生もアシスタントになって、1~2テーブルにあたり一人が、参加者のサポートにあたりました。「参加者が話しかけやすい雰囲気」「細かな目配り」を徹底するようにスタッフ間で意識を共有し、製作にいきづまる参加者が出ないように注意しました。

 こうした工夫により、小さな子供から大人まで、参加者全員が、イベントの時間内に玉枕を完成させることができました。

 さらに、玉枕づくりを、ただの「工作体験」ではなく、「飛鳥時代」や「歴史」への学びにつなげるように意識しました。イベントの冒頭には、牟田口氏から阿武山古墳の被葬者の有力候補である藤原鎌足や、四弁花をモチーフとした玉枕の意匠などについての講演があり、歴史好きの参加者に喜ばれました。また、復元品の玉枕の特別展示に加え、参加者が触ってじっくり見られるように、玉枕の模型やミニチュア玉枕の完成品も用意して、玉枕づくりが、飛鳥時代のものづくりにつながることを強調しました。

 今回のイベントは、子供向けにデザインしたチラシの効果もあったのか、35人の定員に対し、200名以上の応募がありました。急遽定員を増やし、追加開催もしましたが、一部の方にはお断りせざるを得なかったのが残念です。

 アンケート結果をみても、飛鳥資料館を知らなかった、または飛鳥資料館に今年初来館した参加者が半数近くを占めており、今回のイベントが飛鳥の歴史にふれるきっかけとなったことがわかります。

 奈文研の展示部門は、規模は決して大きくはありません。でも、私は、専門性の高い奈文研の研究成果を、子供にも大人にも楽しめる形で提供し、歴史や文化財を大切に思う気持ちを育てていくことが展示部門の使命だと思っています。今後も、飛鳥資料館では、文化財の魅力が体感できるイベントや展示活動を企画していきます。みなさま、ぜひ飛鳥資料館に足をお運びください!!

 

玉枕イベントの会場風景.jpg

玉枕イベントの会場風景

 

牟田口氏作成の模型も用意しました.jpg

牟田口氏作成の模型も用意しました

 

てづくりした玉枕を片手に、復元玉枕と並んで記念撮影.jpg

てづくりした玉枕を片手に、復元玉枕と並んで記念撮影

 

 玉枕イベントの詳細はこちらからも↓↓

 https://www.nabunken.go.jp/asuka/info/post-94.html

 https://www.nabunken.go.jp/asuka/info/post-104.html

(飛鳥資料館研究員 西田紀子)

月別 アーカイブ