なぶんけんブログ|奈良文化財研究所に関する様々な情報を発信します。

ぬりえで楽しむ文化財

2021年12月

 「歴史」や「文化財」と聞くと、勉強するもの・難しいもの、というイメージがありませんか?でも、もっと気軽に歴史や文化財に触れる機会が増えたら、私達の暮らしも、もっと豊かで楽しくなるのではないか?そんな思いから、近年、奈良文化財研究所では、イベントの開催やグッズの企画開発に取り組んでいます。

 その中で、今回紹介するのは、自宅で手軽に楽しめる「彩る歴史―飛鳥資料館ぬりえ―」です【写真1】。飛鳥資料館では、館内およびホームページで、仏像好きにオススメの「銅板五尊像ぬりえ」と飛鳥の石造物として人気の「猿石ぬりえ」を公開しています。2021年4月からは、色を塗った飛鳥資料館ぬりえを持って飛鳥資料館に来館された方に、実物大の銅板五尊像マグネットをプレゼントする企画も数量限定でおこなっています。

 「銅板五尊像ぬりえ」は、飛鳥資料館の東にある山田寺跡から出土した銅板五尊像の図案をぬりえにしたものです。実物の銅板五尊像は、手のひらにすっぽり収まる小さなサイズの銅板に、釈迦が菩薩や弟子に説法する姿を、繊細かつ濃密に表現しています【写真2】。ぬりえでは、細部の細やかな表現をたっぷり楽しむことができます。今は銅色になっていますが、飛鳥時代には金色に輝いていました。飛鳥時代の人々が夢見た釈迦の世界を、皆さんの想像力で色鮮やかなぬりえとして彩ってみて下さい。

 「猿石ぬりえ」は、飛鳥駅からほど近い吉備姫王墓内にある4体の猿石のうち「男像」と呼ばれる石像をぬりえにしたものです。柔和な笑顔が印象的な猿石ですが、背面には厳しい表情をした面長の像が腹ばいになった姿が彫刻されています。「猿石ぬりえ」は、ぬりえをした後に組み立てて、二面の顔を楽しめるようになっています。また、ぬりえを塗っていると、アレ?と不思議な事に気づく方がいらっしゃるかもしれません。面長の像は、右耳の横で親指と人差し指を丸めたポーズをしています。同じポーズを私たちがすると、人間の手では小指が外側についているため、像と同じ手の形にできません。なぜこのような造形をしているのか...謎が深まります。

 飛鳥資料館では、ぬりえの絵柄となった文化財を実際に見ることができます。吉備姫王墓内にある猿石の実物は柵に囲まれていて近寄れませんが、飛鳥資料館の庭の複製品は石像の両面を楽しめます【写真3】。第二展示室では、山田寺跡から出土した実物の銅板五尊像を間近で観察できます。また館内では、来館者から寄せられたぬりえ作品も展示しています。猿石や釈迦の世界のさまざまな彩りを共有するのも来館ならでは楽しみと言えるでしょう。
 新型コロナウイルスの第5波がようやく落ち着き、奈良にも修学旅行生や観光客の賑わいが少しずつ戻りつつあります。第6波が懸念される状況ではありますが、感染拡大防止に留意しつつ、ご自宅で、そして飛鳥資料館で、飛鳥の歴史と文化財を「彩る歴史―飛鳥資料館ぬりえ―」を通してお楽しみください。

■飛鳥資料館ぬりえのダウンロードはこちら
https://www.nabunken.go.jp/asuka/download/


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【写真】彩る歴史 ―飛鳥資料館

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【写真2】銅板五尊像 山田寺跡出土

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【写真3】飛鳥資料館の庭園にある猿石(男像) 複製品

(都城発掘調査部遺構研究室 主任研究員 西田 紀子)



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