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木造住宅の柱間隔

2021年3月

 みなさんは自分の家の柱の間隔を測ったことがあるでしょうか。最近の木造住宅では、柱が壁の中に隠れてしまうので測ることができないかもしれませんが、柱がみえる和風住宅や民家で考えてみましょう。和風住宅の柱間隔は、1つの住宅では一定の寸法を基準にしています。

 では、柱間隔とは具体的に柱のどこからどこまでの寸法を指すのでしょうか。基本的には、柱の中心から中心の寸法で表現します(図1)。これを柱の心々寸法(しんしんすんぽう)といいます。和風住宅で基準にする柱間隔の単位を間(けん)といい、1間は畳の長辺ほどの長さです。例えば8畳の部屋は、2間四方の部屋なので基準の柱間隔の2つ分が部屋の一辺の長さとなります(図2)。

 ところがこの基準の柱間隔(1間の長さ)は、住宅では地域によって異なります。関東地方など東日本では一般的に心々寸法で1,818㎜です。これは歴史的に日本の長さの単位であった尺にもとづいており、1尺=303㎜ですから6尺となります。新潟県の越後平野の農村集落でも、1,818㎜(6尺)の民家がみられます。関西地方では、これより大きく1,970㎜(6尺5寸)が一般的です。また、滋賀県の湖北地方では、1,900㎜ほど(6尺2寸5分ほど)の民家があります。ということは、一口に8畳間といっても、地域によって大きさが違うことがわかります。

 柱の心々寸法を基準に建物の間取りを計画することを柱割(はしらわり)といいますが、これだと柱の大きさによって畳の大きさが変わってしまいます。そこで、畳の大きさを基準に間取りを計画する畳割(たたみわり)という方法も江戸時代初期には考案されました。このような間取りの計画方法も含めたやや複雑な経過を経て、地域ごとに柱間隔が規格化されました。すなわち、京間または関西間(心々6尺5寸、畳長辺6尺3寸)、中京間(心々6尺2寸5分、畳長辺6尺)、江戸間または関東間(心々6尺、畳長辺5尺8寸)といった地域の基準となる寸法が成立したのです。さらに同じ地域でも時代によって異なることもわかっています。この基準寸法は、現代の木造住宅でも使われており、設計する人や地域によってさまざまです。

 建物をつくるための基準寸法もその地域の文化を反映しているといえますね。私たちは、仕事で伝統的な和風住宅の調査をすることがありますが、調査でわかる柱間隔から地域性を感じることがあり、とても興味深く思っています。

 みなさんのご自宅あるいはご実家、ご親戚の家の柱間隔はどうでしょうか?

 

参考文献

西 和夫「日本基準尺地図-1間は何尺ですか」『建築技術史の謎を解く-続・工匠たちの知恵と工夫』彰国社、1986

 

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図1 基本的な柱間隔の表現(平面図)
柱の大きさと間の距離から算出します。
2つの柱の寸法が同じなら一方の柱の外端からもう一方の柱の内端までを測れば簡単です。

 

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図2 8畳の部屋の例
最近の住宅にはフローリングの部屋が多いですが、和室はどの住宅にも1室はある気がします。
日本の心がそうさせるのでしょうか。

(都城発掘調査部アソシエイトフェロー 山本 光良)

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