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コロナ禍における博物館の新しい情報発信のあり方

2021年5月

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、最初の緊急事態宣言が発令されてから早くも1年が経過しました。収束する気配は一向になく、変異株の流行によって第4波も懸念されています。昨年の今頃は来年には落ち着いているだろうと安易に考えていましたが、まだまだ予断を許さない状況が続いています。

 新型コロナウイルスによって日常生活は大きく様変わりしましたが、博物館もその活動形態を大きく変える必要に迫られました。多くの施設で企画展やイベントが中止あるいは延期され、展示やそれにともなう教育普及活動はかなりの制約を受けることとなりました。平城宮跡資料館でも感染防止の観点からハンズオン展示を休止し、ギャラリートークやワークショップといったイベントの開催も断念せざるを得ませんでした。また、不要不急の外出が制限される中、積極的に「来てください!」といった宣伝もなかなかできません。やりきれない思いを抱えつつも、来館されるお客様に喜んでもらうために試行錯誤した1年でした。

 こうした状況下で、「資料館に来館できない方のために何かしたい」、「イベントができないなかでも展示の面白さを伝えたい」といった思いから、動画配信という新たな取り組みをおこなうことにしました。当時、ステイホーム期間中に全国の博物館がオンライン配信を始めていましたが、私自身、動画に関するスキルは全くありません。他機関に問い合わせ、時には動画の撮影風景を見学するなどして情報収集に努めました。それでも実際に始めると、照明であったり、編集方法であったり、なかなかうまくいかず、自分の力不足を痛感する日々なのでした。また、何分であったら視聴者は飽きずに見てくれるのか、展示側の意図を最も効果的に示すにはどういったアングルがよいのか、研究所として配信する意義をもたせつつ視聴者に寄り添う形にするにはどうしたらよいのか、写真室をはじめとする関係者の協力を得ながら試行錯誤の世界です。

 新型コロナという非常事態を受けて始めたオンライン配信ですが、今後は必須なものになっていくだろうと感じています。もちろん、実物をみる感動にはかなわないかもしれませんが、オンライン配信にはいつでもどこでも誰でも見ることができるという強みがあります。また、動画を見た後に実物を見れば、その感動は増すことでしょう。まさに、展覧会へのいざない、実物を鑑賞した後の理解や感動の深化に繋がるものといえます。

 コロナ終息後も様々な発信ツールを用いた広報活動の重要性は増すに違いありません。ぜひ、奈良文化財研究所公式YouTube「なぶんけんチャンネル」をご登録ください。

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【写真1】動画撮影風景:写真室の皆さんにもご協力頂いて撮影しています

(企画調整部アソシエイトフェロー 藤田 友香里)

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