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おもしろさがいっぱい!デジタルメディアを用いた展示

2016年7月 

 博物館や美術館を訪れると、解説映像を目にしたり音声ガイドを使ったりする機会があると思います。博物館施設では、それらのデジタル技術を用いたコンテンツ等を「デジタルメディア」と呼んでいます。近年、世界中でデジタルメディアを取り入れたユニークな展示が行われており、博物館施設になくてはならない存在となっています。そこで、今回は飛鳥資料館にはどんなデジタルメディアを用いた展示があるのか、また、それらがどのような役割を果たしているのかをご紹介します。

 飛鳥資料館の常設展示には、「キトラ古墳天文図の複製陶板」を展示しています。ここでは、キトラ古墳の天井に描かれた天文図の複製陶板に、解説動画を投影しています。展示品の解説をする際、文字や写真による説明だけだとわかりにくいものや、詳しい説明が必要で文章量が多くなってしまうことがあります。しかし、ここでは天文図の壁画と重ねて解説映像を映し出すことで、容易に理解を深めることができる仕掛けになっています。この展示は来館者にも好評です。このような試みを実物の壁画で行うのは保存の関係上難しく、複製とデジタルメディアならではの展示手法になります。

 図書閲覧室に設置してある「壁画ナビゲーション」では、大画面タッチパネルで高松塚古墳やキトラ古墳の通常光の壁画の写真や赤外線写真がご覧いただけます。高精細画像を使用しているため、拡大しても画像が荒れることなく、壁画の筆遣いなど細部まで見ることができるようになっています。実物の壁画をここまで詳細に見ることは難しく、デジタルメディアの活用で可能になった貴重な体験ができます。

 平成28年度春期特別展「文化財を撮る―写真が遺す歴史」の「文化財写真の価値」のコーナーでは、タッチパネルを用いたデジタルブックを導入しました。これにより、限られた展示スペースで、より多くの貴重な文化財写真を見てもらうことが可能になりました。

 このように博物館の展示にデジタルメディアを取り入れることは、展示の幅が広がるとともに、資料の保存と公開活用の両立にもつながります。資料の状態によっては展示することが難しく実物を公開できないこともありますが、デジタルメディアは実物が見られなくても十分に楽しんでもらえる機会や、実物ではできない手法での公開を多くの人に提供できる可能性を持っています。また、来館者のより深い理解を促すコンテンツとして、わかりやすい展示を試みるうえで重要なツールでもあります。飛鳥資料館を訪れた際には、実物や模型と一緒に、ぜひデジタルメディアを用いた展示もお楽しみください!

 

キトラ天文図.jpg

キトラ古墳天文図の複製陶板

 

壁画ナビ.jpg

壁画ナビゲーション

(飛鳥資料館学芸室アソシエイトフェロー 小沼 美結)

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