なぶんけんブログ|奈良文化財研究所に関する様々な情報を発信します。

明日香村の風景のうつりかわり

2022年5月

 わたしは普段、奈文研で文化財の写真を撮る仕事をしています。

 ここ数年、飛鳥資料館との関わりで、明日香村の風景をたくさん撮影してきました。四季折々の景色や、各集落をまわってその土地の特徴を画像として記録します。飛鳥を研究のフィールドにしている研究員に同行し、魅力的な場所をたくさん教えてもらいました。

 最近力を入れているのが、明日香村で昔撮られた風景写真をもとに、そこと同じ撮影地点を探し、現在の風景を撮るという比較写真の撮影です【写真1】。貴重な歴史的風土をもつ明日香村が、実際のところ、どのように変わり、またどこが変わっていないか、そこに改めて目を向けてもらうきっかけになればと、研究員と一緒に調査・撮影をおこなっています。

 同じ撮影地点を探すと言っても、紙焼きされた写真とそのタイトルだけが手がかりなので、一筋縄ではいきません。多くの建物が建て替わり、道路も変化しているからです。そこで、あまり変わることがない山や丘が写りこんでいる写真はそれを頼りに探し出します。また、古地図と現在の地図も現場で確認しながら、新旧のカットができるだけ重なる精度の高い比較写真撮影を目指しています。

 時々、村で出会った住民に昔の写真を見せて場所を尋ねることもあります。当時の様子を聞きながら案内してもらい撮影地点が特定できたこともありました。重い機材を担いで昔の写真と同じ場所を探し歩くのは大変ですが、ここだ!とハッキリとわかる瞬間は嬉しく達成感があります。

 撮影して感じるのは、明日香村は都市と比べ変化は緩やかに見えますが、それでも風景は確実に変わってきたということです。変わることの是非については簡単には言えませんが、このように数年・数十年ごとに同じ場所を記録し続けることはとても意味のあることだと思っています。

 このところ撮りためてきた新旧比較写真は、2019年に『Asuka Past&Present-あすかの原風景』という写真集にまとめました。また、その後撮影した写真は、2022年夏に飛鳥資料館で紹介する予定です。

 明日香村の時代の変遷をご覧いただき、未来の風景について何か考えてもらえると嬉しいです。

sahorou20220502.jpg

【写真1】飛鳥寺南東の丘陵  左:昭和32年、右:平成30年撮影

(企画調整部主任 飯田 ゆりあ)

月別 アーカイブ