梅雨明けから10日経ちました。
蝉たちが生を謳歌する甲高い声が、宮跡内に響いています。これからいよいよ本格的な夏の到来ですね。
平城宮跡内では86種の万葉植物の生育が確認されており、一年を通じて様々な種に出会えます。
本日は、万葉集に詠まれている植物たちをご紹介したいと思います。
◆シダレヤナギ
わが背子が 見らむ佐保道(さほぢ)の 青柳(あおやぎ)を
手折(たを)りてだにも 見むよしもがも 大伴坂上郎女 (第八巻・1432番)
あなたが見ておられるだろう、佐保の青柳を
手折った枝だけでも私は見るすべがほしいことよ。 出典:『万葉集』(二)、講談社、中西進
![]() 東院庭園のシダレヤナギ(2016年3月17日) 過去の記事はこちら |
◆スダジイ
家にあれば 笥(け)に盛る飯(いひ)を 草枕(くさまくら)
旅にしあれば 椎(しひ)の葉に盛る 有間皇子 (第二巻・142番)
家にいたなら食器に盛って食べる飯だのに、
草を枕とする旅の身なので、椎の葉に盛ることだ。 出典:『万葉集』(一)、講談社、中西進
![]() 佐伯門東の道沿いのスダジイ(2015年7月31日)過去の記事はこちら |
◆タブノキ ※都万麻(つまま)
磯の上の 都万麻(つまま)を見れば 根を延へて
年深からし 神(かむ)さびにけり 大伴家持 (第十九巻・4159番)
磯の上のつままを見ると逞しく根を張っていて、
何年もたっているらしい。神々しいことだ。 出典:『万葉集』(四)、講談社、中西進
![]() 東院庭園近くのタブノキ(2016年6月30日)過去の記事はこちら |
◆ツユクサ ※つきくさ
月草(つきくさ)に 衣そ染(し)むる 君がため
綵色(まだら)の衣(ころも) 摺(す)らむと思ひて 作者不詳 (第七巻・1255番)
まず月草で衣を染めることだ。
あなたのために色どり美しい衣を摺ろうと思って。 出典:『万葉集』(二)、講談社、中西進
朝(あした)咲き 夕(ゆふべ)は消(け)ぬる 鴨頭草(つきくさ)の
消ぬべき恋も われはするかも 作者不詳 (第十巻・2291番)
朝に咲いて夕べにはしぼんでしまう鴨頭草のように、
身も消えてしまいそうな恋も私はすることよ。 出典:『万葉集』(二)、講談社、中西進
![]() 佐伯門東の道沿いのツユクサ(2016年7月28日) |