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令和7年度平城宮跡資料館秋期特別展「ナラから平城へ-旧石器からはじまる3万年の歴史-」の展示構成を紹介します!

news96-1-1【画像1】平城宮跡資料館秋期特別展「ナラから平城へ-旧石器からはじまる3万年の歴史ー」ちらし.jpg   【画像1】平城宮跡資料館秋期特別展「ナラから平城へ-旧石器からはじまる3万年の歴史ー」チラシ

 20251018日(土)からはじまりました令和7年度平城宮跡資料館秋期特別展「ナラから平城へ-旧石器からはじまる3万年の歴史-」では、法華寺南遺跡から出土した、今から約3万年前の後期旧石器時代前半期の石器を中心に、平城宮跡周辺で出土した飛鳥時代までの資料を展示しています。今回はその展示意図や内容についてお話いたします。

 本展のメインビジュアルは、昭和3040年代のSF・特撮映画を意識してデザインしました【画像1】。開催にあたり、旧石器時代について一般的に持たれているイメージを検討しました。その際、古典的なものとしては、日本では昭和42年(1967)に公開された映画『恐竜100万年』のような、「火山が大噴火し、凶暴な肉食恐竜やマンモスといった大型動物が跋扈するような、荒々しい環境のなかで生き抜く原始人」が典型的なイメージとしてあるのではないかと思い至りました。そのため、当時のSF・特撮映画のチラシのデザインなどを参考にして、デザインを制作してもらいました。

 そのいっぽう、展示の解説や復元画では、考古学・自然科学などの諸研究の調査成果を反映させました。法華寺南遺跡の概要や復元画の制作過程については、なぶんけんブログ「うんこ座りか⁉片膝立ちか⁉-旧石器時代の石器づくりを復元する-」で紹介しています。

 法華寺南遺跡以外の資料では、それより新しい時期である、今から2万8000~2万4000年前、後期旧石器時代後半期の国府型ナイフ形石器があります。その多くは平城宮東区朝堂院や東院地区などから出土しました【画像2】。石器は平城宮の整地土などから出土していますが、近くに旧石器時代の遺跡が法華寺南遺跡以外にも存在していると予想されます。また、兵部省地区での発掘調査では、弥生時代の平城宮跡内には水田が広がるなか、周囲よりも標高が少し高い地点には集落が広がっていたことがわかりました。集落からは米の煮炊きや貯蔵に使われた甕や壺のほか、狩猟に使用したであろう石鏃や尖頭器も出土しています【画像3】。

 今回主に紹介したもの以外にも、平城宮跡から出土した様々な時代の資料を展示しています。会期も残りわずかとなりましたが、是非、会場に足を運んでご覧いただけますと幸いです。

news96-1-2【画像2】国府型ナイフ形石器(平城宮東区朝堂院出土).jpg             【画像2】国府型ナイフ形石器(平城宮東区朝堂院出土)

news96-1-3【画像3】弥生時代の集落からみつかった土器・石器(平城宮兵部省地区出土).jpg        【画像3】弥生時代の集落からみつかった土器・石器(平城宮兵部省地区出土)

                                    (展示公開活用研究室 小原 俊行)

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