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巡訪研究室(17)都城発掘調査部(平城地区)史料研究室

(2024年3月末まで)

1.都城発掘調査部の文字担当
 史料研究室は、文字資料を研究の対象としています。
 都城発掘調査部の文字担当として発掘調査に参加し、(1)遺跡の性格を理解するための文字資料を収集・検討するとともに、(2)発掘調査で出土した文字資料の釈読にあたっています。中でも木簡については、釈読だけではなく、整理・保管から公開・活用に至るまでを担当し、現在もっとも比重の大きい仕事になっています。

 (1)としては、平城宮の官司名の比定を試みたり、建物復元に資する情報を集めたりしています。最近の成果として、平城宮東方官衙の大型基壇建物を弁官曹司正殿と推定したこと(平城第615次調査)、文献と発掘遺構のフィードバックから、奈良時代の興福寺鐘楼は袴腰をもつ建物で、袴腰付き鐘楼の日本最古の事例になる可能性があると指摘したこと(平城第625次調査)などが挙げられます。

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平城宮東方官衙地区の大型基壇建物

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興福寺の鐘楼


 (2)について、木簡の出土から公開に至るまでの流れについては、巡訪研究室(9)(⾶⿃・藤原地区)史料研究室で詳しくご紹介していますので、そちらをご参照ください。
 木簡の公開・活用については、毎年秋に平城宮跡資料館で木簡の実物展示「地下の正倉院展」を開催しています。地下の正倉院展は2007年度にスタートし、2020年度で14回目を迎えました。遺物保護の観点から、普段は木簡のレプリカを展示しているため、地下の正倉院展は、本物の木簡をまとまった点数ご覧いただける数少ない機会となっています。
 また、各種のデータベースを公開するなど、積極的な情報発信に努めています。
 
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展示会場の様子(2019年度)

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展示木簡の様子(2019年度)


2.木簡のナショナルセンター
  奈良文化財研究所は、日本で最も多くの木簡を調査・保管する機関で、そのうち約8割は平城地区で保管しています。そのため、(1)日本の木簡研究の中心拠点としての機能を担い、(2)海外との交流の中心として、国際的な共同研究をおこなっています。
 (1)については、木簡学会と協力しながら全国の木簡出土情報を収集しています。奈文研のデータベースでは、奈文研保管の木簡だけではなく、全国の調査機関の木簡に関する情報も検索することができます。また、他の調査機関からの出土文字資料の釈読依頼にも対応しています。
 (2)の成果として、「史的文字データベース連携検索システム」を公開しています。国内外の複数機関が所蔵・管理する史的文字について、紀元前後から 19 世紀におよぶ高精細な文字画像を、横断的に検索することができます。
 平城地区で保管している木簡のなかには、国宝・平城宮跡出土木簡や重要文化財・長屋王家木簡もあります。それらの魅力をより広く社会に発信していきたいと思っています。
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国宝・平城宮跡出土木簡



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