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第28回建築史学会賞を受賞しました

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表彰状(高野町教育員会と連名で授与されました)

 2024年4月13日(土)、奈良女子大学記念館講堂で開催された2024年度建築史学会総会において、奈良文化財研究所(以下、奈文研)および高野町教育委員会に対して、第28回建築史学会賞が授与されました。奈文研が編集し、20233月に高野町教育委員会より刊行された『高野町の歴史的建造物』が、優秀な業績と認められたことによるもので、調査・執筆(奈文研:大林潤・鈴木智大・福嶋啓人・目黒新悟・山崎有生・髙野麗、高野町教育委員会:木本誠二)の主体となった2機関が受賞対象となりました。

 本書は2019年度から4ヵ年に渡り、高野町教育委員会より奈文研が受託して実施した高野町における建造物の総合的調査の成果をまとめたものです。

 選考では、悉皆調査物件をまとめた一覧表と所在を明示したこと、詳細調査により高野山の寺院建築群の価値を見出したことなどが評価されました。近年、需要が高まる未指定文化財の把握と、個別物件の歴史的価値の探索の両面から評価されており、今後の調査の方向性を思案する上でも指針となりそうです。

 本書の成果は、連名で受賞した高野町教育委員会はもちろん、調査をご許可いただいた所有者の方々、調査にご参加いただいた和歌山県文化財センターの方々、指導・助言をいただいた和歌山県教育委員会および文化庁の方々のご協力なくしては成しえなかったものです。この場を借りて、深く御礼申し上げます。

 一昨年度の報告書刊行後、昨年度には調査対象のなかから金剛峯寺本坊12棟が重要文化財に、女人堂と金輪塔が和歌山県有形文化財に指定されるなど、すでに保存・活用の側面でも動き出しています。

 この4月より始動した奈文研建造物遺構研究室としても調査研究を深化させながら、成果を地域に還元する方策を模索してまいります。

 なお本書は、全国遺跡報告総覧より全文ダウンロードいただけます。この機会にお手元でご覧いただけますと幸いです。
https://sitereports.nabunken.go.jp/131046

news_93_3_2.jpg       授賞式後、奈良女子大学記念館前にて(左から髙野・目黒・木本・鈴木・山崎・福嶋)

(文化遺産部建造物遺構研究室長 鈴木 智大)

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