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平城京左京三条一坊二坪の発掘調査(平城第658次調査)の現地説明会のご報告

2024年1月27日に現地説明会を開催し、679名の方々に調査成果をご覧いただきました。

みなさま、当日は寒い現地に足をお運びいただきありがとうございました。

発表資料はこちらです。 >>全国遺跡報告総覧

発掘担当者からのコメント:都城発掘調査部 研究員 田中 龍一

 今回の現地説明会でみなさまにご覧いただいたのは、平城京左京三条一坊二坪という場所にあたります。調査地の周囲を見渡すと、すぐ西には平城京のメインストリートである朱雀大路に面しており、平城宮の正門である朱雀門からも歩いてすぐのところだということを実感いただけたかと思います。

 極めて立地の良い平城京の一等地ともいえる場所ですが、坪の中心部分の調査はほとんどおこなわれていなかったため、そこに一体どんな施設があったのかは分かっていませんでした。奈良文化財研究所では、昨年度から継続して坪の中心部分の調査をおこなっており、その核心部分に迫ろうとしています。

 調査の結果、掘立柱建物群や掘立柱塀、井戸と思われる大土坑や礎石を捨てこんだ土坑など、多くの遺構がみつかりました。掘立柱建物は、1棟ごとの規模はそれほど大きくない(むしろ一等地のわりに小さい...!)ものの、合計6棟が東西に整然と並んでいたことがわかりました。建物の規模や配置、出土遺物から考えると、人々が暮らしていた空間というよりも、むしろ倉庫や作業場といったバックヤード的な性格の建物群といえるかもしれません。

 このほか、調査区各所で直径1m近い大きな石の捨てこみを確認しました。現時点で合計18基も確認しており、石の特徴から建物の柱を据えるための礎石であると考えられます。これらはいずれも後世に捨てこまれたものではありますが、調査地周辺で未知の礎石建物が複数存在していた可能性が浮上しました。

 一等地なのに小さい倉庫群?礎石建物は一体どこにあったの?結局どんな施設があったの?など疑問は尽きませんが、現地説明会後も調査を続けています。今後は出土した遺物の検討成果もあわせて、左京三条一坊二坪における土地利用の様相を明らかにしていきます。今後の調査研究の進展にどうぞご期待ください。

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