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興福寺東金堂院北面回廊の発掘調査(平城第649次調査)の現地見学会のご報告

2022年10月15日(土)、興福寺東金堂院の北面回廊の発掘調査の現地見学会を開催しました。

当日は1120名の方が見学に来られました。

発表資料はこちらです。 >>全国遺跡報告総覧

発掘担当者からのコメント:都城発掘調査部 研究員 垣中 健志

 澄み渡った秋晴れの空の下、多くの方々にお越しいただき、誠にありがとうございました。感染症対策にもご理解ご協力いただき、感謝申し上げます。

 今回の調査では、東金堂と五重塔を取り囲む回廊が、東西100m以上になることから、東金堂と五重塔だけで構成されていたと考えられてきた東金堂院の規模が、従来の想定の2倍以上になることが明らかになりました。

 では、なぜ東金堂院はそれだけ大きな区画が必要があったのか?東金堂院には、東金堂や五重塔の以外にどんな建物が建っていたのか?東金堂院は興福寺の中でどのような位置づけであったのか?実は、今回の発掘調査でわかったことよりも多くの問いが、私たちに投げかけられました。それが、今回の調査の最大の成果であり、今後明らかにしなければならない課題であると確信しています。

 現地では、回廊の礎石や基壇外装といった北面回廊の規模や構造に迫る遺構の他にも、雨落溝に堆積する焼土、回廊廃絶後に敷設された参道など、奈良時代から江戸時代、そして現代に至るまでの興福寺の変遷を一同にご覧いただきました。地下から皆様の眼前に立ち現れた、興福寺が積み重ねてきた歴史の痕跡をお楽しみいただけましたでしょうか?

 調査区の南東には、600年近く風雪を堪え忍んできた、興福寺のランドマークと言ってもよい、東金堂と五重塔がどっしりと鎮座し、さらに、西側にはこれまでの発掘調査の成果に基づいて復元された中金堂が見えます。現地見学会で、地下の遺構と地上の堂塔を合わせて見ることで、天平の昔の興福寺のイメージが膨らんだのではないでしょうか。

 発掘調査は10月末頃まで続く予定です。発掘調査の終了後も、出土品の整理、分析や文献史料、絵画資料等の再検討などを通して、東金堂院の実態、そして興福寺の歴史の解明を進めていきたいと思います。今後の成果にもぜひご期待ください。

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