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西トップ遺跡通信16(2020年5月25日)[Western Prasat Top 16]

 2019年に私たち奈良文化財研究所のカンボジア事業が25周年の区切りを迎えたことを受け、2019年12月2日、修復作業が大詰めを迎えている西トップ遺跡現地で、「奈良文化財研究所カンボジア事業25周年式典」を開催いたしました(写真1)。

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写真1

 奈良文化財研究所は、内戦終結直後の1993年に、カンボジアとの共同研究事業を開始しました。カンボジアでは内戦によって文化財、文化財に携わる人材に大きな被害が出ていました。

 そのため、カンボジア内戦後の文化復興に対する国際協力の一環として、

 ・世界遺産に登録されたアンコール遺跡群の調査

 ・カンボジア人若手研究者に対する人材養成事業

に重点を置きながら、現地の文化財保護組織であるアプサラ機構(APSARA National Authority)と共に調査研究や様々な協力事業をおこなってきました。

 1999年から2002年にかけてはタニ窯跡A6号窯の発掘調査を行い、また2002年度からは西トップ遺跡を対象遺跡として、考古学・建築学・保存科学の面から調査研究と技術協力を進めています。2011年からは西トップ遺跡の修復作業を開始し、現在も着々と調査・修復事業を進めているところです。

 「奈良文化財研究所カンボジア事業25周年式典」には、当事業に多大なご指導・ご援助を賜りました皆様にご参列頂きました。

 ・ラフテレーンクレーン等修復に欠かせない大型重機類をご寄贈頂いた(株)タダノ代表取締役社長、多田野宏一様

 ・現地で修復に携わる石工への直接指導を行って頂いた奈良文化財研究所名誉顧問、左野勝次様

 ・カンボジアでの事業進行にあたり、ご協力頂いている在カンボジア日本国大使、三上正裕様

 ・APSARA機構副総裁、キム・ソティン様

に主賓としてご参列頂きました(写真2)。

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写真2

 また、当事業にご協力いただいている、東京文化財研究所、(株)イナダ、日本国政府アンコール遺跡救済チーム、上智大学アンコール遺跡調査団、フランス極東学院、カンボジア側から文化芸術省、アプサラ機構、アンコール保存事務所をはじめ数多くの皆様のご出席を得て、無事に式典を挙行する事が出来ました(写真3)。

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写真3

 25周年を迎えましたが、私たちのカンボジア事業は現在進行中であり(写真4、5)、これからも引き続き西トップ遺跡を中心に調査と協力事業を続けてまいります。

 今後も皆様のご指導ご鞭撻を賜りましたら幸いです。

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写真4

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写真5

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