昨日は二十四節気の一つ「冬至」を迎え、いよいよ本格的な寒さが到来する季節となりました。
朱雀門の北東、中央区朝堂院から東区朝堂院へと向かう道すがら、ひと際目につく赤い実をつける木があります。
「マユミ」です。枝の下方に垂れ下がる実は、秋から冬にかけて鮮やかに赤く熟し、野鳥たちの貴重な食糧となるのです。
マユミの漢字表記は「真弓、檀弓」と書き、弓の材料として最適な材質のため、古来から武具や芸術品として珍重されてきた歴史があります。
『万葉集』ではマユミを詠んだ歌は十二首登場します。その中から二首をご紹介いたしましょう。
◆マユミ
白真弓(しらまゆみ) いま春山(はるやま)に 行く雲の
行(ゆ)きや別れむ 恋(こほ)しきものを 作者不詳(巻第十・1923番)
白真弓を今張る 春山を流れる雲のように、
別れ去るのか。恋しいものを。 出典:『万葉集』(二)、講談社、中西進
白真弓(しらまゆみ) 石辺(いそへ)の山の 常磐(ときは)なる
命なれやも 恋ひつつをらむ 柿本人麻呂歌集より(巻第十一・2444番)
白真弓を射る石辺の山の岩石のような命なら、
こうして恋に苦しむつづけてもいられよう。 出典:『万葉集』(三)、講談社、中西進
万葉時代から人々の身近に存在していたマユミ。1300年余の時を経ても、今なお庭木としても珍重されているマユミの姿は、日本の歴史を感じさせてくれる植物なのかもしれません。
師走の平城宮跡に是非お越しください。
マユミ(以下同) |
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