2019年8月21日(水)・22日(木)の両日、「奈良の都の木簡に会いに行こう!2019」(日本学術振興会ひらめき☆ときめきサイエンスプログラム。奈良文化財研究所・日本学術振興会共催、奈良県教育委員会・奈良市教育委員会後援)を、平城宮跡資料館講堂をメイン会場として開催しました。
この企画は、国宝にも指定され教科書にも登場する重要な資料である木簡について、子どもたちにもっと知ってもらいたいと考えて実施しているもので、今年で3回目になります。本物の木簡を見ながら、古代の木簡が、今使っているのとほとんど同じ漢字で書かれていて、読むのがけっして難しくないことを体験し、木簡が身近な資料であることを実感してほしい。また、木簡の整理・調査・保存に関わる作業を通じて木簡の資料としての特徴や重要性を知り、歴史や考古学の面白さを実感し興味をもってもらいたい、そう考えました。
今回も多くのご応募をいただき、最終的に2日間で計41名の小5から中3までの子どもたちのご参加を得て、保護者のみなさんと一緒に木簡づくしの1日を味わっていただきました。
開講式・オリエンテーション・科研費の説明のあと、「実習①:木簡ってなに?―木簡を観察してみよう─」として、早速水漬け状態と保存処理済みの本物の木簡を、班ごとに先入観なくじっくり観察しました。木簡は、例年のように、参加者それぞれの名まえの文字が含まれているものを予め用意し、かつ班ごとに色々なタイプの木簡が見られるようにしました。また、文字、木簡の形、加工、材質など、木簡をモノとして総合的に理解できるように適宜解説も織り交ぜ、観察のまとめとなるようにしました。
次に、「実習②:木簡を見つけよう―木簡を含む遺物の洗浄・選別を体験―」と「実習③:木簡に触れてみよう―木簡の水替え作業を体験―」を、全体を2つに分け、午前・午後交替で実施しました。
「木簡を見つけよう」では、平城宮跡の発掘現場から土ごと整理室に持ち帰った木簡を含む土(木屑の堆積)を、水流を利用しながら洗い、削屑を中心とする遺物を探し出しました。同時にこの作業で見つかるさまざまな遺物の分類も体験しました。「木簡に触れてみよう」は、水漬けで保管してある木簡の保存液の減り具合、汚れ具合をチェックして、水を補充・交換する作業です。研究員や実施協力者の大学院生の手助けを得ながら本物の木簡に触れる体験ができました。
2つの実習の間の昼休みには、復元された古代食に使われた食材の木簡についてのお話しのあと、奈良パークホテルの協力で復元された古代食のお弁当に実際に舌鼓を打ち、古代貴族の食膳を体験しました。また、昼休み明けには、今年初めての試みとして「見学:木簡の保存処理設備を見に行こう」を行いました。水漬け状態の木簡を科学的に保存処理する方法について、埋蔵文化財センター保存修復科学研究室の松田和貴研究員の説明を聞いたあと、実際に機器が設置してある保存修復棟を見学しました。
プログラムの総仕上げは「実習④:木簡を読んでみよう-木簡の解読に挑戦─」です。筆順を想像しながら不完全な文字を読む練習をしたあと、木簡を読むための最も基本的な作業である記帳作業(筆順を考えながら木簡の墨痕を読み取ってスケッチする作業)を、実物の1.5倍で製作した木簡の模型で体験しました。今年は平城宮跡内裏北外郭官衙のゴミ穴から出土した国宝木簡の一つ、但馬国からのワカメの贄の木簡を読んでみました。子どもたちに意見を出してもらいながら、木簡解読のノウハウや歴史的な説明も交えながら解説して実習の締め括りとしました。
最後に閉講式で参加者全員に「未来博士号」として修了証を差し上げ、全プログラムを終了しました。
これまで2ヵ年4回にわたる実施経験に基づき、木簡を自発的かつ多面的に理解できる参加型のプログラムとなるよう心がけました。プログラムの基本はこれまでと大きく変わりはありませんが、新しいメニューを加えたり実習時間のバランスを変えたりといったプログラムの改善、学年や性別に配慮した班分けなど、運営にはさまざまな工夫を凝らしました。遠方からの参加者やリピーターも多く、お蔭さまで多くの子どもたちに楽しんでもらうことができました。
参加してくださった子どもたちと保護者のみなさま、そしてご支援いただいた日本学術振興会、及びご後援をたまわった奈良県教育委員会と奈良市教育委員会に対し、この場を借りて心からお礼を申し上げます。
(副所長 渡辺 晃宏)
実習①:木簡ってなに? |
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実習②:木簡を見つけよう |
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実習②:木簡を見つけよう |
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ミニ講義:復原された古代食の食材の木簡について |
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見学:木簡の保存処理設備を見に行こう |
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実習③:木簡に触れてみよう |
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実習④:木簡を読んでみよう |