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(200)新庁舎の完成

平城京造営語る遺構保存

 奈良文化財研究所の新庁舎が完成し、10月から新庁舎での業務が始まります。当初の計画よりも2年遅れの完成となりました。

 その理由は、発掘調査で発見された遺構を保存するために、建物の配置や設計を全面的に変更したからです。

 見つかったのは、秋篠川の旧流路や、碁盤の目状に区画した平城京の条坊道路遺構です。平城京遷都の直前には、秋篠川が奈文研の敷地の中を北西から南東に斜めに流れていました。平城宮の建設時に、この流路を整備して建設資材の運搬に利用。その後に木の枝を敷き並べる敷葉工法で流路を埋め、平城京の条坊道路を建設していることがわかりました。流路の底には牛や馬、人間の足跡が無数に残り、敷かれた木の枝には緑の葉がそのまま残っていました。

 これまで平城京建設の具体的な様子は知ることができませんでした。発見遺構は、全国から動員された役民たちが、牛や馬を駆使して原野を切り開き、平城京造営の国家プロジェクトに挑んだ大工事の様子を生々しく伝えています。

 発掘遺構は新庁舎の敷地の地下に保存し、地上に遺構表示をしました。ぜひ皆さん、奈文研新庁舎の探検に来て下さい。

 「探検!奈文研」、ご愛読ありがとうございました。200号を機に、しばらく充電期間に入ります。

 

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10月から本格的に業務を開始する奈良文化財研究所の新庁舎

(奈良文化財研究所長 松村恵司)

(読売新聞2018年8月30日掲載)

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