朝夕の風に秋を感じる季節となりました。
平城宮跡では今、ひと際目を引く鮮やかな紅色の花が見頃を迎えています。
日本の秋を彩る花の一つ、ヒガンバナ(彼岸花、別名:曼殊沙華)です。
その名の由来のとおり、彼岸である秋分の日前後に一斉に花開き群生する様は見事です。
とても印象深い花ではありますが、約4,500首の和歌が収録されている「万葉集」では、ただ一首「壱師(いちし)」という名でのみ詠まれています。
この「壱師(いちし)」の花が何であるのか、その特定には諸説あるようですが、現在はヒガンバナであるとする説が最有力とされています。
◆ヒガンバナ
路の辺(へ)の 壱師(いちし)の花の いちしろく
人皆知りぬ 我が恋妻(こひづま)を 柿本人麻呂歌集(巻第十一・2480番)
路のほとりの壱師の花のようにはっきりと
人はみんな知ってしまった 私の恋しい妻を 出典:『万葉集』(三)、講談社、中西進
心地よい風を肌に感じながら、平城宮跡を散策してみませんか。