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(194)飛鳥の原風景2

今昔 農業の変化知る

 前回、空から見た明日香村の原風景を紹介しました。今回は、これまで奈良文化財研究所が撮りためてきた飛鳥の地上写真を紹介しましょう。

 奈文研では、発掘にあたり多くの飛鳥地方の写真を撮影してきました。これらの写真からは、発掘された遺跡の様子だけではなく、当時の村の景観も見えてきます。

 その一例が、1956年の飛鳥寺の発掘調査時に撮影された写真です。飛鳥寺の周囲には駐車場や土産物屋もなく、茅葺(かやぶ)きの民家が多く残っています。

 後方に写っている甘樫丘(あまかしのおか)には、薪(まき)や炭を作るための落葉樹が植えられていました。木々が生い茂る現在の甘樫丘からは、想像できない姿です。

 これらの古写真に写された風景の現状を知りたい......。飛鳥資料館では今春、風景の変化を写真で比較できるよう、昔と同じ位置での撮影に取り組みました。この写真を撮った畑地を探訪したところ、なんと竹やぶになっていました。耕されなくなった畑地が姿を変えていたのです。現在、明日香村の様々な場所で竹やぶを目にしますが、これは村の農業の変化を反映した風景なのです。

 このほかにも、飛鳥資料館特別展「あすかの原風景」(7月1日まで)では、今昔の飛鳥の風景の比較が楽しめます。ぜひ、足をお運び下さい。

 ※本記事に掲載されている特別展は終了しています。

 

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1956年の明日香村の写真。中央右上に飛鳥寺、後方に甘樫丘が写っている

 

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最近の飛鳥寺周辺(今年4月)

(奈良文化財研究所飛鳥資料館研究員 西田紀子)

(読売新聞2018年6月5日掲載)

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