なぶんけんブログ|奈良文化財研究所に関する様々な情報を発信します。

(193)飛鳥の原風景

古墳周りに田畑広がる

 飛鳥の風景といえば、懐かしさや歴史を感じる方も多いことでしょう。しかし、地元では「昔と変わった」という声もしばしば耳にします。では、かつて飛鳥にはどんな景色が広がっていたのでしょうか?

 そんな疑問に答える貴重な資料が奈良文化財研究所にあります。1955年に撮影された飛鳥地方の航空写真です。

 当時、飛鳥地方では、大和平野農業用導水路の工事に向けた発掘調査が計画されていました。発掘調査で見つかる建物跡や石敷きなどの遺構を、飛鳥地方や大和盆地の地形全体の中で理解するためには、正確な位置の把握が欠かせません。そこで奈文研は、発掘調査に先駆けて、1000分の1の地形図を作成するための航空写真測量を行ったのです。

 この航空写真では、民家の屋根の形まで見ることができます。整備途中の石舞台古墳の周辺に広がる棚田、小山田古墳の名残を示す畑地。住宅が増え、道路や遺跡の整備が進む現代と比較すると、飛鳥の景色の変化が見えてきます。

 航空写真は、飛鳥資料館で開催中の特別展「あすかの原風景」(7月1日まで)で公開中です。ちょっと昔の飛鳥の空中散歩を、ぜひお楽しみください。

 ※本記事に掲載されている特別展は終了しています。

 

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特別展で展示中の飛鳥地方の航空写真=奈良文化財研究所飛鳥資料館提供

(奈良文化財研究所飛鳥資料館研究員 西田紀子)

(読売新聞2018年5月29日掲載)

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