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(190)孫悟空のルーツ

頭に輪 唐三彩の猿発見

 孫悟空ほど、何世代にもわたって子どもたちに愛されるヒーローはいないでしょう。平成の孫悟空といえば、ドラゴンボールの主人公ですよね。そのモデルは「西遊記」に出てくる猿の妖怪です。

 西遊記の舞台は、中国の唐の時代。日本では奈良時代にあたります。三蔵法師が経典を求めて、遠くインド(天竺(てんじく))まで旅したのは本当の話です。でもその旅に妖怪の孫悟空、猪八戒(ちょはっかい)、沙悟浄(さごじょう)が加わり、大冒険の「西遊記」ができあがるのは、明の時代(14世紀頃)のことと言われています。この西遊記は、仏教を広めるために広く流行し、日本にも伝わりました。

 孫悟空のモデルになったお猿さんは、西遊記の基になった話に、三蔵法師の案内役のサル行者(ぎょうじゃ)として登場します。孫悟空の頭の金環は、西遊記では三蔵法師が言うことを聞かない悟空をこらしめるためにかぶせますが、これは唐代の修行僧(行者)が身につけていた帽子の一部とみられます。

 奈良文化財研究所も参加した中国の窯跡の調査で、頭に輪をかぶった唐三彩の猿のおもちゃが見つかりました。唐代にはすでに孫悟空のモデルになった猿の修行僧が、子どもたちに愛されていたのかもしれませんね。孫悟空のルーツに一石を投じる新たな発見です。

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頭に輪をつけた猿の唐三彩=奈良文化財研究所提供

(奈良文化財研究所主任研究員 神野恵)

(読売新聞2018年4月3日掲載)

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