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(187)平城京の犬

貴族の大切なペット

 16日は旧暦のお正月でした。今年の干支(えと)・戌(いぬ)にちなみ、犬の話題を一つ。奈良時代の平城京でも、犬は大切な仕事のパートナーやペットとして、かわいがられていたようです。

 有力貴族の長屋王の邸宅跡からは、「御馬屋犬」「若翁犬」「御犬」などと書かれた木簡が出土しています。「御馬屋犬」は馬屋の番犬、王族の子供を意味する「若翁」という言葉を冠した「若翁犬」は、長屋王の子供達のペットと考えられます。わざわざ御と付ける「御犬」は、他の犬達とは区別されるお犬様、つまり邸宅の主である長屋王の愛犬でしょうか。

 長屋王家木簡の中には他に「越犬」という名も見えます。現代に名のある越(こし)の犬は、越国(こしのくに)(今の北陸地方)原産の犬です。残念ながら1970年代に純血種は絶滅してしまいましたが、その姿は柴犬のような典型的な日本犬で、耳は立ち、尾は巻いていました。長屋王邸の「越犬」は、もしかすると今の私たちにとっても馴染み深い姿だったのかもしれませんね。

 その一方で、同じく長屋王邸出土の土器に描かれた犬の姿は少し様子が異なります。鼻筋は長く、耳は垂れ、西洋犬のようにも見えませんか。

 奈良時代、貴族の邸宅の中を駆け回った犬の姿を想像するだけでも、興味は尽きません。

 

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長屋王邸跡出土の土器に描かれた犬の絵

(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 座覇えみ)

(読売新聞2018年2月20日掲載)