現地の専門家 育成
近年、世界的に文化遺産の保護に対する関心が高まる中、専門家の不足が大きな問題になっています。そこで今回は、奈良文化財研究所が考古学の専門家育成のために行っている国際協力を紹介しましょう。
奈文研は1990年代前半から、カンボジアのアンコール遺跡群の修復事業を通して、現地の専門家の育成に取り組んできました。考古学の専門家を目指す若手研究者を日本に招待し、文化財の調査や、遺跡の保存・整備の方法を学ぶ研修を続けています。
また、2013年からは、東京文化財研究所と共同で、ミャンマーでの国際研修事業を開始しました。ミャンマーの世界文化遺産は、まだまだ知名度が高くありませんが、14年6月にシュリクシェトラなど三つの都市遺跡が、ミャンマーでは初めて、国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されました。
ミャンマーでの研修は、遺物の実測、保存処理、写真撮影、遺跡の保存・整備・活用、遺跡の測量など、多くの技術を現地の専門家に伝えています。
こうした活動の成果は、すぐに表れるものではありませんが、文化遺産を守る日本の技術や知識を世界に広められればと思っています。
ミャンマーのボーボージーストゥーパでの写真研修
(奈良文化財研究所研究員 山藤正敏)
(読売新聞2018年2月6日掲載)