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(185)腐りやすい道具

竹利用 あれこれ想像

 むかしむかし、あるところにお爺(じい)さんがいました。お爺さんは山に入って竹を取り、いろいろなことに使っていました―。これは有名な『かぐや姫』の物語の始まりの部分です。

 竹利用の歴史は古く、奈良時代の宝物が収められた正倉院には、竹で作られた様々な道具が残っています。例えば、大小さまざまな大きさの筆。横笛や尺八などの楽器。また、竹を細く割りさいて編まれた目の細かな籠。弓矢の矢柄や杖(つえ)にも竹が使われています。

 また、木簡のなかにも「竹」の文字が残るものがあり、奈良時代の人々は盛んに竹を利用していたようです。しかし、不思議なことに、平城宮や平城京からは、木製品は数多く出土するのですが、竹製品の出土はほとんどありません。なぜでしょうか。

 これは、中空の竹が腐りやすいことに原因があるようです。1万人近い平城宮の役人たちが日常的に使った筆も、平城宮からは一本も出土していないのです。

 そうしたなか、写真の節を持つ竹は平城宮から出土しためずらしい例です。両端が加工された長さ20センチほどの竹ですが、何に使われたのかは推測の域を出ません。

 奈良時代の竹利用は、正倉院に残された竹製品を手がかりに、あれこれと想像するしかないようです。

 

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平城宮から出土した竹

(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 浦蓉子)

(読売新聞2018年1月30日掲載)

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