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(181)発掘を通した異文化交流

学び合い切磋琢磨

 考古学を学ぶ私たちにとって、さまざまな土地や時代の遺跡調査に参加することは、とても新鮮で貴重な経験です。

 奈良文化財研究所と韓国の国立慶州文化財研究所(慶州研)は、2005年から双方の研究員が互いの研究所に約2か月間滞在して、実際の調査に参加する発掘交流を行っています。

 韓国の南部にある慶州は、新羅の都が置かれた古都。慶州研は、王宮遺跡やその周辺にある古墳などを調査しています。私も昨年秋の約2か月間、発掘調査に参加しました。

 お隣の韓国といえども、そこは外国。土質の違いは当然のことながら、発掘の道具や調査の進め方も異なります。当然、疑問や戸惑いがふくらみます。そんなときは片言の韓国語を使って、時にはスケッチブックや地面に絵を描きながら、意見を交わします。言葉の違いはあれど、お互い考古学徒。遺跡を理解したい気持ちは同じなのです。

 そして今、慶州研の鄭聖睦(チョンソンモク)さんが、奈文研の発掘調査に参加しています。彼もまた、日本の遺跡を相手に格闘しています。そして時折、私たちがハッとするような意見を出してくれます。お互いの発掘調査の良い点を学び合って、切磋琢磨(せっさたくま)することが発掘交流の目的なのです。

 

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遺構を見ながら意見を交わす筆者(右)と鄭聖睦さん(奈良市の東大寺で)=奈良文化財研究所提供

(奈良文化財研究所研究員 芝康次郎)

(読売新聞2017年10月31日掲載)

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