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(179)舌を出す鬼瓦

ペロッと敵を袚う

 みなさんは、幼いころ「アッカンベー」をしたことはありますか。最近の若い人は、「てへぺろ」の方になじみがあるでしょうか。

 飛鳥時代には蓮(はす)の花の文様だった鬼瓦に、オニの顔が付くようになるのは奈良時代のこと。平城宮には、なんと舌をペロッと出した鬼瓦があります。

 古くから舌は持ち主のエネルギーの源と考えられてきました。逃げ出す時には舌を巻き、うそつきは閻魔(えんま)様に舌を抜かれる……。さまざまな伝承や言い回しを振り返ると、なるほどと思わされます。舌を出す行為は、口からエネルギー(気)を吐きだす様を表したようです。

 唐傘おばけのような妖怪や鬼が、人を脅すしぐさとされた一方、悪霊や邪気を退け、人や建物を守る神や神獣のしぐさとも考えられたようです。「舌を出して敵となるものを祓(はら)う」行為は、東アジアだけでなく広く世界中に分布しているのです。

 奈良時代半ば以降に全国に流行する鬼瓦は、下あごが省略され、舌も表現されなくなります。しかし、平城宮の鬼瓦は一部を除き、舌の出し方は少々控えめになりつつも、奈良時代を通じて舌を出しつづけています。舌をぺろりと出して建物を守るチャーミングな平城宮の鬼瓦たちを、ぜひ探してみてください。

 

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鬼が舌を出す様を表した平城宮跡出土の鬼瓦=奈良文化財研究所提供

(奈良文化財研究所主任研究員 岩戸晶子)

(読売新聞2017年10月3日掲載)

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