【訂正とお詫び】
掲載いたしました植物名に誤りがございました。以下のとおり訂正し、お詫びいたします。
【誤】フジバカマ → 【正】サワヒヨドリ ※両方「キク科ヒヨドリバナ属」
秋の気配が色濃くなり、澄んだ空気のなか平城宮跡の草原には虫たちの高らかな声が響いています。虫たちの声や草原を渡る風の音にそっと耳を澄ましていると、どこか移ろいゆく季節のもの寂しさを感じずにはいられません。
さて、今回は秋を代表する植物「秋の七草」をご紹介いたします。
平城宮跡において目にすることができる植物は、ハギ・ススキ・クズ・フジバカマです。
◆山上臣憶良の、秋の野の花を詠める二首
秋の野に 咲きたる花を 指折り かき数ふれば 七種の花 (第八巻・1537番)
(あきののに さきたるはなを およびおり かきかずふれば ななくさのはな)
秋の野に咲いている花を指で折って数えると次の七種類の花が美しい。
萩の花 尾花葛花 瞿麦の花 女郎花また藤袴 朝貌の花 (第八巻・1538番)
(はぎのはな おばなくずばな なでしこのはな をみなへし またふぢばかま あさがほのはな)
萩の花、薄、葛の花、瞿麦、女郎花、藤袴、朝貌の花。
出典:『万葉集』(二)、講談社、中西進
「万葉集」に収録されているこの二首の歌が「秋の七草」の始まりだといわれています。主に食用とされてきた「春の七草」とは対照的に、「秋の七草」は花を見て楽しむものです。
歌中の「尾花(おばな)」は「ススキ」を意味します。茎の先端に花穂をつける姿が獣の尾の形に似ていることから「尾花」の名で詠まれています。
また、「朝貌(あさがほ)」は朝に咲く美しい花を意味する名でここでは「キキョウ」を指しています。
東院庭園のハギは見頃を迎えています。秋風が心地よい平城宮跡での散策をぜひお楽しみください。