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(173)第一次大極殿いつできた?

平城遷都時は未完成

 平城宮跡(奈良市)のシンボルとして親しまれている、第一次大極殿。平城遷都1300年の節目に合わせて、2010年に完成しました。

 ところが、奈良時代の第一次大極殿は、平城遷都が行われた710年(和銅3年)3月には、どうやら未完成だったらしいのです。

 手がかりとなったのは、1点の木簡。第一次大極殿を取り囲む回廊の発掘調査で見つかった、伊勢国(今の三重県)の荷札です。

 荷札は整地土の中から見つかり、裏面に「和銅三年正月」と年紀が書かれていました。つまり、遷都のわずか2か月前、回廊はまだ建設前の地ならしをしている段階だったのです。

 このことから、遷都時には大極殿の区画一帯が工事中であった可能性が高い、と考えられるようになりました。

 では、第一次大極殿は、いつ完成したのでしょう?

 遷都後初めて大極殿が記録に現れるのは、715年の元日朝賀(ちょうが)(年始の挨拶(あいさつ))で、この少し前に完成したとみられます。このとき皇太子(後の聖武天皇)は、初めて儀式用の礼服を着て朝賀に臨みました。同年の元日朝賀は、大極殿のこけら落としと皇太子のデビューを兼ねた一大セレモニーだったと考えられるのです。

 

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回廊の発掘調査で出土した荷札(赤外線写真)

(奈良文化財研究所主任研究員 桑田訓也)

(読売新聞2017年6月6日掲載)

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