千年の時 超える観月会
「庭を見るなら京都、仏像を見るなら奈良」と言われるほど、奈良の庭は一般的にあまり知られていません。京都なら、龍安寺や金閣寺など有名な寺院の庭がすぐ頭に浮かぶでしょう。しかし、奈良と言われたら、どこの庭をイメージしますか?
奈良は仏像や古建築、古墳、花など様々なテーマで紹介されることがあっても、庭という切り口はほとんどみられません。では、奈良らしい庭とは何でしょうか。
今回はその代表例の一つ、長い間地下に埋もれていた平城宮跡(奈良市)の東院庭園を紹介しましょう。この奈良時代の庭は、1967年に奈文研の発掘調査によって見つかり、復元整備され、98年から一般公開されています。1000年以上忘れられていた庭が今、私たちの目の前に広がっているわけです。言い換えれば、古くて新しい庭です。
東院庭園は宮中の饗宴(きょうえん)や儀式などを催す場所でしたが、奈文研では、毎年秋にその様子を再現した「観月会」を開催しています。曲がりくねった池の中央に突きでた朱塗りの露台(テラス)と平橋を舞台に、雅楽や天平衣装が披露されます。みなさんも古代食を味わい、名月を愛(め)でながら、古代の貴人達の生活に思いを馳(は)せてはいかがでしょう。
東院庭園で毎年秋に催される観月会
(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー エマニュエル・マレス)
(読売新聞2017年4月4日掲載)