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(169)危機から脱した文化遺産

日本・カンボジア 連携調査

 危機から脱した文化遺産として、今回はカンボジアのアンコール遺跡群を採り上げましょう。アンコール遺跡群は、802年から1431年まで栄えたアンコール王朝時代の壮大な遺跡群です。1992年に国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に、また同時に「危機遺産」にも登録されました(危機遺産は2004年に解除)。

 悲しいことに70年代以降、20年以上続いたカンボジア内戦によって、教師や研究者らを中心に、たくさんの人々が亡くなりました。破壊や盗掘などによる遺跡の被害も大きく、カンボジアだけでの復興は困難な状況でした。

 そこで、内戦終結後に日本とフランスが中心となって、アンコール遺跡群の保護に乗り出しました。奈文研も92年から現地政府と連携して調査に着手しました。2002年からは西トップ遺跡の調査を奈文研が担当し、この遺跡が9世紀から16世紀に至る長い歴史をもつことを明らかにしました。

 11年からは、倒壊した石組みの祠堂(しどう)の解体修復作業を進めています。15年に南祠堂の修復が終了し、現在は北祠堂の修復に取り組んでいます。カンボジア人が自らの手でアンコール遺跡群を守っていけるように、奈文研はこれからも国際協力事業に取り組んでいく予定です。

 

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奈文研が調査した西トップ遺跡の修復前の様子

(奈良文化財研究所専門職 佐藤由似)

(読売新聞2017年3月26日掲載)