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(165)平城宮跡出土の木製容器

曲物 日本オリジナル?

 白木の木目が美しい曲げわっぱ。スギなどの針葉樹の薄板を曲げて容器にした「曲物(まげもの)」の一種です。現代では伝統工芸品となっていますが、曲物は日本では古代から日常的に使われていた道具でした。

 私たちが発掘調査している平城宮跡(奈良市)からも、たくさんの曲物が見つかっています。これらは、いつ、どこで使われ始めたものなのでしょうか。

 古代には、中国大陸から朝鮮半島を経由して、様々な文化や情報がもたらされました。曲物もこうした流れの中で外国からもたらされたものだったのでしょうか。

 最近、日本と朝鮮半島の出土木器を調べていくうちに、そうではない可能性が見えてきました。朝鮮半島では、奈良時代と同時期の遺跡からは曲物が全く見つかっていません。椀(わん)や鉢など木の器は数多く見つかっていますが、曲物はまったく見当たらないのです。

 その理由は、曲物を作るための木材にあると考えられます。日本ではスギ・ヒノキ・サワラ・アスナロなどの木材を用いて曲物を作りますが、朝鮮半島の古代の遺跡からはこうした木材で作った道具はほとんど出土していません。

 両地域の植生の違いが、作る道具や食卓のあり方の違いを生み出したのでしょう。

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平城宮跡で出土した曲物

(奈良文化財研究所研究員 庄田慎矢)

(読売新聞2017年2月19日掲載)

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