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(164)瀬田遺跡の円形周溝墓

県内最古の前方後円形

 2016年春、橿原市の瀬田遺跡で、弥生時代の終わり頃に造られた「円形周溝墓(えんけいしゅうこうぼ)」が見つかりました。円形の墳丘の南側に台形の陸橋がとりついており、古墳時代の「前方後円墳」にそっくりです。全長はおよそ26メートル、墳丘の直径は約19メートル。残念ながら、墳丘は後世に削りとられていましたが、周溝がよく残っていたため、お墓の形や大きさがよくわかりました。

 瀬田遺跡の円形周溝墓は、県内で見つかった最も古い前方後円形のお墓です。橿原市の東北に位置する桜井市には、最古級の前方後円墳とされる箸墓(はしはか)古墳や纒向(まきむく)石塚古墳があります。ところが、さらにそれよりも古い前方後円形の円形周溝墓が、これまでに香川県や兵庫県、大阪府、滋賀県では見つかっていました。

 当然、奈良県でも纒向石塚古墳よりも古い、前方後円形の弥生時代の周溝墓が見つかるはず……。そうした予想と期待に応えたのが、今回の発見だったのです。瀬田遺跡の円形周溝墓から纒向石塚古墳へ、そして箸墓古墳へと、前方後円墳がどのように出現したかを考えることができるようになりました。

 

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畝傍山(奥)に近い瀬田遺跡で見つかった円形周溝墓。周溝の跡がよく残っていた

(奈良文化財研究所主任研究員 森川実)

(読売新聞2017年2月12日掲載)