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(159)キトラ古墳・四神の館

トラ古墳・四神の館

壁画 細心の注意で保存

 前々回(157回)は明日香村の「キトラ古墳壁画体験館 四神(しじん)の館」の公開エリアを紹介しました。今回はその舞台裏、壁画と出土遺物の保存管理施設を紹介します。

 2010年に石室から取り外されたキトラ古墳の壁画は、修理施設で壁面ごとに再構成され、今年8月に「四神の館」の保存管理施設に収納されました。

 1300年前に描かれた壁画はとても脆弱(ぜいじゃく)なため、強い光を避け、温度は22度前後、相対湿度は55%前後と、一定の環境で保管する必要があります。そのため、他の多くの博物館や美術館と同様に、「四神の館」の保存管理施設も気密性の高い建物になっています。

 しかし、見学者が出入りする展示室は、外気の流入を防ぎきることができません。特に夏期の湿った外気は要注意で、外気が展示室にある出土遺物の展示ケースにまで〈侵入〉すると、壁画の保存に悪影響をおよぼす恐れがあります。

 そのため、館内の各所に温度・湿度の測定装置を設置し、適切な保存環境が維持されているかを常に監視しています。保存管理施設はもちろん、必要に応じて展示ケース内の除湿剤の量を調整するなど、保存環境の維持に細心の注意を払っています。

 

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各所に温度や湿度の測定装置を設けている「四神の館」

(奈良文化財研究所埋蔵文化財センター主任研究員 脇谷草一郎)

(読売新聞2016年11月27日掲載)

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