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(155)地下の正倉院展より

木簡 形からも読み解く

 木簡の実物を見たことがありますか? 木簡にはさまざまな形状があります。切り込みがあったり、先端が尖(とが)っていたり、円柱状だったり……。書かれている文字はもちろん大事ですが、形から得られる情報も、木簡を理解する上で重要です。

 古代の役人の勤務評価の木簡も特徴的な形をしています。厚みがあって、側面には左右に貫通する孔(あな)が開いています。役人一人ひとりに一本の木簡が用意され、それをたくさん並べて紐(ひも)で連ねたようです。この状態にすると、評価や位の順に並び替えができ、整理するのに便利でした。

 また、これらの木簡は削って再利用されました。削りすぎて木簡の表面に孔が出てきたものもあります。削りくずに残る文字から、木簡に書かれた全体の内容を推定することも可能です。

 奈文研の平城宮跡資料館では毎年秋の「地下の正倉院展」で、普段は見ることができない木簡の実物を展示しています。今年の展示は勤務評価の木簡とその削りくずがテーマです。180点ほどの木簡を3回に分けて展示します。展覧会は11月27日まで。ぜひ、ご覧ください。

 

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紐で連ねた木簡を見ながら、紙に書き写したとみられる

(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 藤間温子)◇作画・早川和子

(読売新聞2016年10月23日掲載)

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