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(153)万葉集の漢字のなぞなぞ

文字遊び 歌に忍ばせて

 〽ぶんぶんぶん ハチがとぶ~♪

 万葉集の中に「蜂音」と書かれた歌があります(二九九一番歌)。でも、蜂は登場しないし、「ハチオト」と読んでも音数に合いません。一体、この2文字はどう読むのでしょうか。

 そのヒントは、最初の蜂の歌にあります。ぶんぶんぶんの「ブ」です。蜂の羽の音を読み方に利用したもので、漢字の意味や音訓は全然関係ありません。

 さらに、「蜂音」の前には「馬声」とあります。馬の鳴き声で「イ」と読ませ、両方でうっとうしいという意味の単語「イブせし」を表現しています。馬が鳴き、蜂も飛び回っていたら、見るからにうるさそうですよね。

 それでは、もう一つ、万葉集の漢字のなぞなぞをみなさんに。

 「山上復有山」。山の上に山があるよ、さて、その漢字はなあに?(一七八七番歌)

 答えは「出」の字です。

 この表現は中国の古い書物にありますが、日本語の歌に利用したのは面白い工夫ですね。

 単に漢字の意味や音を並べるだけではなく、文字遊びを歌のなかに忍び込ませていたとは......。首をかしげる私たちを見て、古代の人々の笑い声が聞こえてきそうです。

 みなさんも、漢字のなぞなぞを考えて、古代の人々にチャレンジしてみてはどうですか?

 

(153)万葉集の漢字のなぞなぞ_岡本友紀.jpg

(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 井上幸)◇イラスト・岡本友紀

(読売新聞2016年9月25日掲載)

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