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(144)写真が遺す歴史

37万枚の学術情報

 写真による正確でわかりやすい記録は、文化財の調査研究に欠かせません。奈文研は文化財の調査研究にあたり、多くの写真を撮影し、学術情報として保存してきました。その数は37万枚にもおよびます。

 奈文研による飛鳥地域の発掘調査は、今からちょうど60年前、飛鳥寺跡から始まりました。カメラやフィルムも高価な時代でしたが、研究員たちは、写真記録の重要性を意識して、積極的に撮影にあたりました。

 当時珍しかったカラーフィルムの使用を提案したのは考古学の研究員だった坪井清足でした。鈴木嘉吉や工藤圭章ら建築史学の研究員は、遺跡の全景写真などを大判カメラで撮影しました。

 撮影した写真は写真技師の渡辺衆芳が現像しました。プロの写真技師が現像する安心感が現場の研究員たちにはあったといいます。昭和30年代の川原寺跡、伝飛鳥板蓋宮(あすかいたぶきのみや)跡の発掘調査でも、同様の体制で写真が撮られました。

 調査風景や遺物の出土状況などは、カラーフィルムで撮影されました。飛鳥寺塔跡の発掘調査では、舎利容器を発見するまでの様子が、コマ送りのように写真に遺(のこ)されています。

 7月3日まで開催中の飛鳥資料館の特別展「文化財を撮る」では、飛鳥寺跡をはじめ、飛鳥地域の貴重な文化財の写真や撮影機材を展示しています。文化財写真の撮影体験コーナーもあります。ぜひカメラ持参でお越し下さい。

 

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1957年(昭和32年)の川原寺跡での撮影風景

(奈良文化財研究所飛鳥資料館研究員 西田紀子)

(読売新聞2016年6月19日掲載)