高さも最大級?
前回お話ししたように、奈良時代の東大寺東塔の基壇は、一辺24メートルほどの規模がありました。これを全国各地にある古代寺院の塔跡の大きさと比べてみましょう。
7世紀の塔の平均的な基壇規模は、およそ12メートルほどです。8世紀の国分寺では、相模(神奈川県)や美濃(岐阜県)の塔の基壇が大きく、20メートル前後あります。ご存知のように、国分寺には七重塔の建立が命じられているので、規模の大きな国分寺の塔は七重塔だった可能性が高いと思います。
それと比べても東大寺東塔の規模は一段と大きく、全国の国分寺の中心である「総国分寺」にふさわしい規模といえるでしょう。では、東塔の高さはどれくらいだったのでしょうか?
文献には70メートル前後と100メートル前後の二つの記録が残っています。ちなみに現存する塔で最も高いのは、京都市にある教王護国寺(東寺)の五重塔で、基壇の高さを除くと、55メートル近い高さがあります。
東大寺東塔の基壇の規模は最大クラスなので、塔の高さも高いと考えたいのですが、私は100メートルでは高すぎると思っています。これも2016年度におこなう発掘調査で、解明できることを期待しています。
東大寺東塔の復元案(左は100メートル級、中央は70メートル級)。右は教王護国寺五重塔(パンフレット「東大寺東塔院跡」を一部改変)
(奈良文化財研究所遺構研究室長 箱崎和久)
(読売新聞2016年5月29日掲載)