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西トップ遺跡通信15(2016年7月1日) [Western Prasat Top 15]

 偽扉部分の復元

 これまでの調査で、北祠堂は少し石材が小振りな点、偽扉部分には釈迦如来立像が彫り込まれている点など、南祠堂や中央祠堂とは違った特徴を持っていることが明らかになっています。偽扉とは、建物の扉にあたる部分が開口せず、石材で閉塞されている部分を指します。アンコール遺跡では、寺院を装飾する一つの方法として偽扉部分に文様を彫刻する事例が多くあります。西トップ遺跡の北祠堂にある偽扉は南面と西面については20世紀初頭の古写真が残されており、その存在が知られていました。

 ところが20世紀のどこかの段階で大きく崩れたと見られ、偽扉部分も南面と西面の釈迦如来立像の足の部分だけ原位置に残されていました。幸い、南面の如来立像の上半身はアンコール保存事務所に保管され、所在確認を取ることができました。しかし、西面と全く記録の残っていない北面に関しては再構築にあたり、どうしても復元することが必要です。

 現在、カンボジア人スタッフを中心にこの如来立像を復元する作業が進められています。膨大な数の散乱石材の中から、偽扉に当たる部分を探し出し、崩れてしまった如来立像を組み立てていきます。現在までのところ、西面の如来立像ほぼ8割組上がってきました(写真1)。そして散乱石材の中から、カンボジア人スタッフたちが北面にあたると思われる釈迦如来像を発見し、下半身部分が組上がりました(写真2)。

 驚いたことに、発見された如来像は腰をひねり、足を踏み出しているように表現されています。これはスコータイやアユタヤなどで特徴的な図像で、これまでアンコールで発見された事例はありません。今後、上半身を含めて更なるパーツを探り出し、全体像を明らかにする必要があります。

 

 

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写真1 復元された北祠堂西面偽扉釈迦如来立像

 

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写真2 新たに発見された北祠堂北面偽扉釈迦如来像

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