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(139)古代の軟弱地盤工法

枝葉敷きつめ 水はけ良く

 旧秋篠川は、平城宮の建設予定地の南西隅付近を北西から南東に蛇行しながら流れていました。平城京の造営時に、これを条坊に沿った直線的な河川に付け替えて運河に利用したのが西堀川、現在の秋篠川です。

 その付け替えの大工事の痕跡が、奈文研の庁舎の建て替え工事に伴う発掘調査で見つかりました。

 旧秋篠川の埋め立てには、敷葉(しきは)工法という特殊な土木技術が用いられていました。敷葉工法とは、積み土の下に植物の枝や葉を敷きつめて、土を滑りにくくしたり、土中の水を逃したりする技術です。

 秋篠川を埋め立てた後に、ここには一条南大路と西一坊大路を通す計画になっていました。よほど、しっかりと埋め立てないと、道路がぬかるんでしまいます。そこで、道路部分はとくに念入りに3層以上も枝葉を敷きつめ、その上に、乾くと良くしまる黒色土を入れて仕上げていることがわかりました。

 発掘作業を進めると、なんと緑色が残る敷葉が姿を見せました。残念ながら、空気に触れると、すぐ茶色に変色してしまいましたが、奈良時代の緑葉が真空パックされた状態で残っていたのです。幸運にも、発掘に従事した私たちだけが見ることのできた、奈良時代の新鮮な木々の緑でした。

 

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奈文研の庁舎建て替え工事に伴う発掘調査で出土した「敷葉工法」の跡

(奈良文化財研究所主任研究員 神野恵)

(読売新聞2016年4月17日掲載)

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