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(138)大仏殿より大きい大仏殿?

聖武天皇の思い特大

 今、日本一高いビルと言えば、あべのハルカス。でも、奈良にも世界に誇る巨大建築があります。そう東大寺大仏殿です。桁行(横幅)50メートル、梁(はり)行(奥行)50・5メートル、高さ46・4メートルの世界最大の木造建築です。

 平安時代中頃の教科書『口遊(くちずさみ)』には、巨大建築として、「雲太、和二、京三」と出てきます。太、二、三は太郎・二郎・三郎のように順番を、雲は出雲大社、和は大和国の大仏殿、京は平安京の大極殿を指しています。ここでは高さの順に出雲大社を一番にあげていますが、建物の大きさでは大仏殿が一番でした。

 現在の大仏殿は3代目です。奈良時代の天平宝字2年(758年)に建てられた大仏殿は、治承4年(1180年)の南都焼打ちで失われました。鎌倉時代に再建された大仏殿も永禄10年(1567年)に焼失し、今の大仏殿は元禄4年(1691年)に建てられたものです。

 奈良時代の大仏殿は、横幅が現在よりも一回り大きく、なんと桁行290尺(約86メートル)、梁行170尺(約51メートル)もあったようです。

 今の大仏殿でも十分に大きいですが、奈良時代の大仏殿はもっと巨大だったとは…。聖武天皇の大仏にかけた思いがひしひしと伝わってきますね。

 

(138)大仏殿より大きい大仏殿_岡本友紀.jpg

(奈良文化財研究所研究員 海野聡)◇イラスト・岡本友紀

(読売新聞2016年4月10日掲載)

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