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(132)朱雀門前でトンテンカン!

行事用広場 元は工房

 平城宮の正面玄関である朱雀門。この門前は、外交使節団を送迎したり、国家的な儀式やイベントを行う広場のような空間でした。

 その一角の発掘調査をおこなったところ、驚くべき発見がありました。計画的に配置された数多くの「炉」の跡が見つかったのです。

 炉跡の脇には、赤く熱した鉄をたたいて整形するための、金床(かなとこ)石が据えてありました。炉跡は47基、金床石は26基も見つかりました。

 鉄釘(くぎ)などの出土から、どうやら平城宮の造営に使う鉄製品を作る工房が存在したようです。

 工房の中は、どんな様子だったでしょう。12~16人ほどの職人たちが、赤く熱した鉄を金床石の上で、トンテンカン!と打ち、次々と製品をつくり上げる姿が目に浮かびます。ふいごと呼ばれる道具で、炉に風を送って炭を燃やす係りもいたことでしょう。

 広場予定地のこの場所は、平城宮に最も近く、平城京の造営の邪魔にもならない、臨時の工房を置くにはうってつけの場所でした。そして、平城宮ができる頃には、この工房はすっかり埋め立てられ、きれいな広場に姿を変えたのです。

 朱雀門の前を通るたび、私には、たくさんの職人が忙しそうに鉄を打つ音が聞こえてくるような気がしてなりません。

 

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朱雀門前で見つかった工房跡

(奈良文化財研究所主任研究員 神野恵)

(読売新聞2016年2月14日掲載)