色や切り込み 情報満載
みなさんは、本物の木簡を見たことがありますか? 奈文研の平城宮跡資料館では、毎年秋に「地下の正倉院展」で本物の木簡を特別に展示しています。今年は10月17日から11月29日まで。そこで今回は、木簡の見方をご紹介します。
平城宮木簡は、地下から届けられた天平びとの手紙です。全部漢字で書かれていますが、1300年前の文字が読めたり、意味がわかればうれしいですね。
でも、文字だけを見るのは、もったいない! 木簡のおもしろさは、木の部分にも詰まっています。
例えば、木簡の切り込み部分。よく見ると、色が変わっていませんか? 横方向に色が白く抜けていれば、それは紐(ひも)がかかっていた痕跡です。
切り込みを横から眺めてみましょう。上下二方向から刃を入れた跡が見えませんか? 刃の深さに差があれば、加工の順番がわかります。深い方が先、浅い方が後から入れた刃です。木簡を横から見られるのは、実物展示ならではのこと。
こうした色の違いや刃物の跡は、すべての切り込みに見えるとは限りません。だからこそ、観察のしがいがあるのです。
本物の木簡を見ることができる機会は、多くありません。せっかくの機会、文字も木も、丸ごと楽しんでみてはいかがでしょうか。
イチイの実の付札木簡。表(右)は紐の跡、裏面は刃物の跡が見て取れる
(奈良文化財研究所研究員 桑田訓也)
(読売新聞2015年10月11日掲載)