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文化的景観研究集会(第7回)の開催 その2:シンポジウム編

景観研究室では、11月28日〜29日にかけて文化的景観研究集会(第7回)「営みの基盤 生態学からの文化的景観再考」を開催しました。

その模様を、3回にわたってご報告したいと思います。

 

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その1 ポスターセッション編

その2 シンポジウム編(今回)

その3 エクスカーション編

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シンポジウムでは、1つの基調講演と4つの研究報告、そしてパネルディスカッションをおこないました。

 

◇基調講演 「絡みあう文化多様性と生物多様性」

           佐久間 大輔氏(大阪市立自然史博物館/主任学芸員)

◇研究報告1 「里山 ― 都市近郊での自然の使い方」

           深町 加津枝氏(京都大学大学院/准教授)

◇研究報告2 「田と森 ― たたら製鉄が生み出した風景の関係性 奥出雲たたら製鉄及び棚田の文化的景観」

           高尾 昭浩氏(奥出雲町教育委員会/調整官)

◇研究報告3 「動物 ― 四万十川流域におけるテナガエビの意味」

           山下 慎吾氏(魚と山の空間生態研究所/代表)

◇研究報告4 「植物 ― 里と里山の繋がりを取り戻す:西日本での森・草原・田の利用」

           白川 勝信氏( 北広島町立 芸北 高原の自然館/主任学芸員)

 

パネルディスカッションでは、生きものの観点から、文化的景観の持続につながるものは何か、保全とはどういうことなのかを議論しました。研究報告者4名に加え、モデレーターの神戸芸術工科大学の小浦久子教授、コメンテーターの法政大学の福井恒明教授の計6名で活発なやりとりがおこなわれました。

特に生態学の方々から学んだのは、モニタリングの考え方です。地域の特定の要素を定期的にモニタリングすることで、変化を読みとり、これから起こりそうなことを探知し、その対応策を事前に探り、修整していくことができます。変化し続けることで持続している地域、つまり、文化的景観の保全を考えるとき、こうしたモニタリングの手法から学ぶことは多そうです。

また、そのモニタリングを専門家に任せるだけではなく、地域の人たち自身で行うことの大切さも話題に上がりました。点検作業に参加することで、自分たちの地域の変化への実感を得て、価値や今後のあり方を考えるきっかけにもなっているようです。「モニタリングは未来を考える基盤」という言葉が印象に残りました。

文化的景観では、計画や事業などの実施後にモニタリングをし、その結果をフィードバックすることが必要だと言われていますが、現状ではそうした取組まで進められている事例は限られています。今後、景観研究室でも、文化的景観におけるモニタリングの考え方や方法について研究していきたいと思います。

 

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佐久間氏による講演                        深町氏による研究報告

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山下氏による研究報告                      景観研究室の惠谷より講演・報告のまとめ 

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モデレーターの小浦氏とコメンテーターの福井氏       4名の研究報告者

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深町氏と高尾氏                           山下氏と白川氏

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