なぶんけんブログ|奈良文化財研究所に関する様々な情報を発信します。

(113)出土場所の記録方法

5種類のコードで管理

 発掘調査で出土する土器や瓦などの遺物は、どこから出土したのか、その位置情報がとても重要です。

 そこで私たち発掘調査員は、遺物が出土したら、すかさず出土場所に関する情報をカードに記入して、遺物を取り上げます。使うのは油性ペンと水に強く破れにくいカード。

 例えば、ある出土遺物に付けられたカードの「429次 6AAF JK43 灰色土 080421」という文字。これは皆さんが住む家の住所のように、遺物の出土場所を示す記号です。最初の429次は、発掘調査の次数です。次の「6AAF」は大地区といい、住所でいえば「~市~町」にあたります。「JK43」は中・小地区といって、「~丁目~番地~号」にあたり、これで3メートル区画の地図上の位置を示します。「灰色土」が出土した土層名、最後が日付です。

 大地区の「6」は奈良時代を、次の「A」は宮殿遺跡を意味し、この遺物が平城宮跡から出土したことを示しています。

整理室できれいに水洗いされ、乾燥した遺物の表面には、カードと同じ内容の記号が、墨や白い絵の具を使って1点ずつ小さな文字で記入されます。このようにして、出土遺物は奈文研の中で迷子にならないように、大切に収蔵されているのです。

 

(113)出土場所の記録方法.jpg

水洗後、カードとともに乾燥中の瓦片

(奈良文化財研究所研究員 高橋知奈津)

(読売新聞2015年8月9日掲載)

月別 アーカイブ