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(111)古代の休暇願

「盗難」「洗濯」様々な理由

 体調が悪くて学校を休みたい。家族旅行で会社を休みたい。こういう時には、休むことを学校や会社に連絡しなくてはなりませんね。

 奈良時代の役人たちも休暇が必要になると、「請暇解(せいかげ)」と呼ばれる休暇願を役所に提出して、許可をもらうことになっていました。

 正倉院には、奈良時代の請暇解が、たくさん残っています。それらには、休暇を申請する理由と、休暇の希望日数などが書かれています。この辺は、現在とよく似ていますね。

 休暇の申請理由を見てみると、仕事が一段落した、というのが一番多く、本人の病気やけが、家族・親族の病気なども理由にあげられています。また、変わったものでは、仕事着を洗濯するためとか、泥棒に盗まれた家財を探すためという理由もあります。

 提出された請暇解の余白には、休暇を許可した上司の書き込みや、休暇終了後にちゃんと出勤したことをチェックしたものもあり、出勤日が厳しく管理されていたようです。

 こうした厳しさのためか、本物の休暇願を紙に清書する前に、木簡を使って下書きや練習することもありました。休暇願の下書きが必要とは…。奈良時代の役人は、休みをとるのも大変だったのですね。

 

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(奈良文化財研究所アソシエイトフェロー 方国花)◇イラスト・岡本友紀

(読売新聞2015年7月19日掲載)

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