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(101)和同開珎の読み方は?

江戸期から続く論争

 和銅元年(708年)に発行され、平城京を中心に広く使われた和同開珎。その読みは「わどうかいほう」? それとも「わどうかいちん」? 

 教科書ではどう読まれているのか、昨年発行の高校日本史の教科書を調べてみました。
 その結果、「わどうかいちん」と振り仮名をつけたものが5冊、「わどうかいちん(かいほう)」と両方の読みを書いたものが3冊ありました。でも読みを「かいほう」だけに限ったものは1冊もなく、どうやら「かいちん」の方が優勢なようです。
 実はこの和同開珎の読み方をめぐり、江戸時代から今日まで「珍宝(ちんぽう)論争」と呼ばれる論争が続いているのです。
 「かいちん」説は、珎を珍と同じ字と考えます。これに対して「かいほう」説は、年号和銅の「銅」の金偏を省略して「同」に、「寳」のウ冠と貝を省略して「珎」にしたと考えるのです。さてどちらが正解? 

 現在では、和同は「調和」を意味する熟語で、わざわざ年号と同音の言葉をお金の名前に選んだと考えられています。なんとも凝(こ)った名前の付け方ですが、それが千年後の人々を悩ませる原因になろうとは、命名者は想像もしなかったでしょうね。もちろん奈文研では「わどうかいちん」と読んでいますよ。

 

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708年発行の和同開珎(上)とその拓本

(奈良文化財研究所長 松村恵司)

(読売新聞2015年4月26日掲載)