奈良文化財研究所に関するさまざまな情報を発信します。

どっちが近道?

2015年5月

 「こっちが近道だよ」

 「いやいや、こっちの方が近道だよ」
 こういう議論をしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 どちらのルートが近道なのか…普通は歩いてみるまでわかりませんが、最近はコンピューターを用いることで、ある程度の答えを導き出せるようになっています。
 皆さんの中にも携帯型デジタル端末の地図機能で、ルート検索を行ったことがあるという方は多いのではないでしょうか。

 この「近道を探す機能」は一見、文化財とは関係なさそうにも思われるかもしれませんが、考古学で遺跡の分布などを考える時には、一つの参考になる情報です。

 地形の情報を元に、コンピューター上で様々な計算をするためのシステムは、地理情報システム(Geographic Information System : GIS)と呼ばれています。
 移動する上で楽なルートはどこ?という計算もGISの代表的な機能の一つです。専門用語では「最小コスト経路分析 (Least-cost Path Analysis) 」と言います。
 標高のデータに基づいて土地の起伏を算出し、どこをどのように進めば最も楽に目的地にたどり着けるのかを計算しています。

 例えば、図1のような地形の場所があったとします。
 Aという場所からBという場所まで行こうと思った時、あなたならどこを通って行きますか?

 真ん中に丘陵が聳えていることで、真っ直ぐ行くのはどう考えても大変です。 丘を大きく回りこんで行くのが早いのか、それとも真ん中の峠を越えて行くのが近道なのか…。
 そこでコンピューターを使って計算させた結果が図2です。

 この結果ですと峠を越えて行くのが僅かに楽なようです。
 あなたの予想はどうでしたか?

 しかしながら、実際の世界では、コンピューターでは表現されていない様々な障害があるかもしれません。
 そのため、研究を深めるためには、次の段階として、実際に現地調査をしてみることも重要になってきます。
 コンピューターを使ったら全て解決!というわけではないのが、考古学の奥深いところでもあります。

 コンピューターの力を借りることで、どこが近道なのかはすぐに分かるようになりました。
 ですが、残念ながら研究の近道は教えてくれそうもないので、一歩一歩着実に進みたいと思う今日このごろです。

 

とある場所の地形図.jpg

 図1 とある場所の地形図

 

最小コスト経路と移動コスト面.jpg

 図2 最小コスト経路と移動コスト面(段彩は等時移動範囲を示します)


※図は、国土地理院がダウンロードで提供する基盤地図情報(数値標高モデル5mメッシュ)を用いて作成しました。

 (都城発掘調査部研究員 清野陽一)