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(93)平城京の住民とお金

貸し借り 様々な事情

 平城京の住民にとって、お金はとても身近なものでした。お金で買い物をし、お金で税を納め、そして、お金の貸し借りも行われていました。

 正倉院には、奈良時代の借金の証文が数多く残っています。借りたのは写経生たち。貸したのは、彼らの勤め先である造東大寺司の写経所です。金額はさまざまですが、おおむね月に数百文。利息はかなり高めで、月に13~15%。翌月の給料や自分の家・土地を担保にし、保証人も付いていました。

 平城宮跡から見つかった木簡の中にも、借金証文とみられるものがあります。写経所以外の役所でも、お金の貸し借りが行われていたようです。

 借金証文には、借金の理由までは書かれていません。写経生たちは、なぜ借金をしたのでしょうか。  借金と返済を何度も繰り返している人や、返済できずに逃亡し、捕まってしまった人の例からは、生活維持のために借金せざるを得ない、困窮した様子がうかがえます。

 しかし、借金の理由がすべて生活苦とは限りません。写経所が資金調達のために、写経生たちに半強制的にお金を貸し付けた、という説もあります。

 ひとくちに借金と言っても、その背景には、借りる側・貸す側のさまざまな事情があったのです。

 

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平城宮跡から見つかった、借金の申請にかかわる木簡の表(右)と裏(左)。「借請銭十二」などと記されている

(奈良文化財研究所研究員 桑田訓也)

(読売新聞2015年3月1日掲載)

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