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オカシル連続講座2014(第5回)のご報告

オカシル連続講座2014(第5回)が、3月22日(日)、
kokoka京都市国際交流会館の特別会議室で行われました。
テーマは「緑が語る、地域の本来と将来~京都岡崎の文化的景観②」です。

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現在の岡崎地域(京都市左京区)は緑にあふれ、
その間をぬうように琵琶湖疏水や白川が流れています。
上空からみると地域全体があたかもひとつの大きな園池を成しているようにも見えます。
この上質な緑の空間はどのようにして生まれたのか、
そして、これからどのように手入れしていけばよいのか。
文化的景観を切り口に、岡崎の緑を水とその将来を見つめる回となりました。

講座では、まず、景観研究室の惠谷より、
「京都岡崎の文化的景観と南禅寺界隈のアカマツ文化」についてお話しいたしました。

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続いて、加藤友規さん(植彌加藤造園社長)から、
「京都岡崎界隈での庭園の育み方」についてお話しいただきました。

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植治の代表的な庭園である無鄰菴と對龍山荘について、
本質的価値の分析と現状の分析をふまえた繊細な手入れのあり方に、
来場者のみなさんは驚きを隠せなかったようです。
「庭と共に庭師の感性も育まれていく」というメッセージも込められたお話しでした。

最後に、東京農業大学元学長の進士五十八先生から
「“京都らしさ”“地域らしさ”って何?」というご講演をいただきました。

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先生は景観研究室編の『京都岡崎の文化的景観 調査報告書』を通読してくださり、
岡崎のとらえ方や今後のあり方に対する多くのポイントをお示しくださいました。

例えば、

  • 岡崎はスライドパズルの空白のような場所。平安京・京都にとって新たに必要となったいろいろなものを岡崎という空白地に押し込むことで、他のパーツを動かすことができてきたのではないか。
  • 京都は盆地全体が庭。細部が美しいのであって、来訪者はパノラマを見ているのではなく足元・きめの細かさを見ている。京都の風景をつくっていくときはすべてを一度に見せるのではなく、変化させながら見せていく工夫が必要。
  • 都市はエッジが大切で、このエッジが緩いとグダグダになってしまう。京都には三山があるのだから、その額縁を大切に、さらに強調していくべき。

といった内容でした。

市民・行政・企業・研究者にむけて何が重要であるかを茶目っ気たっぷりにお話しいただき、
おおいに笑い、おおいに考えさせられたご講演でした。

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