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(87)平城京の旧石器時代

3万年前の眠る遺跡

 みなさんは奈良盆地にいつごろから人が住み始めたのか知っていますか?

 それは平城京が造られるはるか昔、3万年以上も前の旧石器時代です。なぜこの時代に人が住んでいたことが分かったのでしょう。それは、約3万年前の姶良火山(今の鹿児島湾北部)の大噴火によって降り注いだ火山灰層の下から、石器が散らばって見つかったからです。

 その場所は、奈良市にある法華寺のやや南に位置するので、「法華寺南遺跡」と呼ばれています。出てきた石器は、割れ口の鋭いサヌカイトと呼ばれる石で作られたヤリの刃先やナイフ、そしてそれを作ったときに生じた石屑(くず)です。サヌカイトは香芝市の二上山から持ってきたもので、それを大切に上手に使って石器を作った様子がわかります。

 この時代の人々は、今のように一つの場所に住み続けることはなく、季節の変化などに応じて移動する生活を送っていました。移動しながら、石器作りに適した石を集めて道具を作り、動物の狩りや木の実採りをしながら日々を暮らしていたのでしょう。

 法華寺南遺跡で見つかった石器や石屑の散らばりは、こうした生活の一場面を示しているのです。平城京の下に旧石器時代の遺跡が眠っているとは誰も想像しませんでした。平城京の発掘調査の思わぬ副産物です。

 

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(奈良文化財研究所研究員 芝康次郎) ◇イラスト・岡本友紀

(読売新聞2015年1月18日掲載)